出版社内容情報
病死した母親の後を追う少年の姿を端正な文体で描いた表題作ほか、デビュー作「子供部屋」、教科書の定番作品「あこがれ」「自転車」など全十四編を収める。短篇小説の名手による〈少年〉を主題としたオリジナル・アンソロジー。
【目次】
子供部屋/幼年詩篇(Ⅰ馬糞ひろい Ⅱ父の教え Ⅲあこがれ)/
子供の墓/自転車/言葉/天使が見たもの/海の子/家族の一員/
三月の風/みぞれふる空/水にうつる雲/あの夏あの海
〈巻末エッセイ〉父の視線(沢木耕太郎)
内容説明
病死した母親の後を追う少年の姿を端正な文体で描いた表題作ほか、デビュー作「子供部屋」、教科書の定番作品「自転車」「あこがれ」「三月の風」、随筆「あの夏あの海」など全十四編を収める。短篇小説の名手による“少年”を主題としたオリジナル・アンソロジー。
著者等紹介
阿部昭[アベアキラ]
1934年、広島県に生まれ、神奈川県藤沢市に育つ。東京大学文学部フランス文学科卒業。59年、ラジオ東京(現TBS)に入社し71年まで勤務。62年、「子供部屋」で文學界新人賞を受賞し、作家デビュー。73年、『千年』で毎日出版文化賞、76年、『人生の一日』で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。89年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ねなにょ
22
親子、主に、父と息子の情景が淡々とした文章で描かれている短編集。表題作の『天使が見たもの』は、実際の事件を基にしているそうだけれど、あまりに切なすぎる。2022/02/03
tsu55
19
安部昭の作品を読むのは今回が初めてなのだけれど、その無駄のない端正な文章に心惹かれた。高校の教科書によく採られているというのも納得できます。2019/09/23
しんこい
12
作者初読み。ノスタルジーだけでなく、鵠沼や湘南が舞台なのでなんとなく土地勘もあるし、昭和の感覚もよくわかる。ごみ拾いとか、子供の言葉とかまったく自分の経験みたいだった。2020/02/25
ぱせり
11
どの物語も、どんよりと淀んだような空気が満ちている。だけど、どうしようもない父子の斜め下あたりに、寂しいような温いようなものがあるのを感じる。やりきれない気持ちのなかで、ふと目に入ってきた、どうってことのない景色が、妙に鮮やかで忘れられなかったりもする。2019/11/13
海燕
9
著者の作品は初読み。少年期の主人公を扱った作品というと、エネルギーをもて余した子どもたちの無邪気な様を生き生きと描いたものを思い浮かべるのだが、そうではない。戦後間もない時代を舞台に、敗戦の余韻とか貧困とかが色濃く残る中、父や母と子といった家族を切り取って描き、家族とは何かを考えさせる。どうしようもなく閉塞感に満ちた世界もある。軽い気持ちで読める作品ばかりではない。文体は端正で、教科書に採用されるのも納得。表題作の評価が高いようだが、私は「海の子」、「三月の風」、随筆「あの夏あの海」などが好みだった。2022/10/09