出版社内容情報
行きつけの蕎麦屋、お気に入りの喫茶店、廃炉作業のつづく福島第一原発の食堂……。
日本各地の料理人・職人・店主を取材し、みずからミニコミの執筆・編集・発行を手がけてきた著者。どこに出かけても、そこにはいつも、味覚のよろこびがあった。思い出す料理、人との出会い、畑を耕した三年間など、日常のなかで、変わりゆくものと変わらぬものを感じながら、食の風景を綴る。
主なメニュー:食堂/コーヒー、おやつ/台所/畑/酒場
内容説明
各地の飲食店主や職人の取材を続けるかたわら、お酒のミニコミ『のんべえ春秋』を発行してきた著者。懐かしの大食堂、小さな台所での工夫、郊外のコーヒーショップ、都会の片隅にある畑…。日常のささやかな変化を感じながら、さまざまな食べもの・飲みものとの出合いを綴る。おいしい話満載の一冊。
目次
食堂(蕎麦屋のカレー;蕎麦屋の夏みかん ほか)
コーヒー・おやつ(コーヒー迷い道;東京らしい喫茶店 南千住『カフェ・バッハ』 ほか)
台所(地味に滋味、干瓢;夏の昆虫食 ほか)
畑(畑日記三年分 東京都足立区の片隅で)
酒場(酒器?酒器?大好き?;三十七のとき思っていたこと ほか)
付録=酒飲む本 書評エッセイ(のんべえのための文庫10冊)
著者等紹介
木村衣有子[キムラユウコ]
文筆家。1975年栃木生まれ。持ち場は食文化と書評。お酒ミニコミ『のんべえ春秋』編集発行人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じょんじょん
52
食のエッセイ、と単純に言いたくない、いささか普通とは異なテイストでした。三年間の「足立区農業体験型農園利用者」に応募して野菜育成に奮闘する様子が挿入されている。(この章は二段組で字が小さい。しかも、一番のボリューム)農園作業は失敗や虫対策に追われ、楽しみよりも苦しみのほうが大いのではと思ってしまったが、真摯にとりくむ姿に敬服しました。エッセイでは「食エッセイ」だけど「食にこだわりない」ことが面白かった。登場するツバメコーヒー店主も珈琲に興味ないと言ったり。なんだろう、流されない感じが好き。伊勢うどん章も。2019/03/02
ホークス
45
2017年刊。食のエッセイ集。庭木から道に落ちた夏みかんを拾って食べる。後日その家の前を通ると、木は切られ表札も無い。生きる無残さ、食べる一瞬の輝きが対比されて爽やか。著者は琴線に触れた物をつくづくと眺め、実直に描写する。でも没入はしない。廃業した実家の干瓢問屋についての話も感傷が全く無い。少し硬くて寂しい文章。本書の半分は3年間の農業体験日記。週に一度の農園通いはいつも虫との格闘、育たない野菜へのグチと不熱心への反省。でもやはり感情は抑えめ、と言うか自分に対して素っ気ない。静かに頑張っている感じ。2022/06/07
ユメ
36
食をテーマにしたエッセイを好んでよく読むが、中でも、ただ料理を美味しそうに描くのみならず、その食事の向こう側にあるものを伝えてくれる本が好きである。本書でリポートされている、長く愛され続けてきた百貨店の大食堂を再開された方の心意気や、喫茶店のマスターの誠実さを感慨深く読んだ。何より圧倒されたのは、著者自身が三年間続けた農業体験型農園での日々を記録した畑日記だ。農業が綺麗事ではないということがひしひしと伝わる。これを本職としている人たちがいてこそ自分の食卓があることを、私は忘れていまいか。胸を突かれた。2017/12/08
コジ
28
★★★☆☆ 文筆家 木村衣有子の食エッセイ。近所の蕎麦屋での出来事を綴った内容から福島第一原発の大食堂での食レポまでこなす内容だが、一番ボリュームがあったのは、体験型農園での三年間を綴った畑日記(この章だけなぜか二段組)。畑での体験、収穫した野菜の出来栄えや味など様々な事柄が書き記してあり、筆まめな印象を持つ反面、畑仕事は結構いい加減?。虫食われや水不足で枯らしてしまった野菜が「勿体無、もっと世話すればいいのにな~」と思いつつも、自分で育てた野菜を調理して食べる様子は羨ましい限り。2018/03/09
緋莢
14
図書館本。雑誌や、ウェブマガジンに掲載された食べ物に関する文章をまとめた本。<蕎麦屋の品書きに「カレーライス」とあるのを見つけるのはうれしい。>から始まる「蕎麦屋のカレー」、「東京らしい喫茶店 南千住『カフェ・バッハ』」では東京にやってきた旅人に、少しでも「東京らしさ」に触れてもらいたい喫茶店として 紹介(続く2024/05/10