内容説明
「人間の性的活動は、動物のそれと全く違った面をもっている…つまり快楽の欲求によって動かされている。」芸術や宗教の根柢に横たわり、快楽・錯乱・狂気にまで高まるエロティシズムの渉猟。矛盾に満ちた精神世界を冒険した渋澤龍彦の軌跡。
目次
セクシュアルな世界とエロティックな世界
眼の欲望
エロスの運動
女のエロティシズム
存在の不安
同性愛と文学について
十人の性科学者
異常と正常
処女の哲学
胎内回帰願望について
性のユートピア
女性不完全論
反自然の性愛技巧
自己破壊の欲求
エロティック・シンボリズムについて
性の恐怖と不能
アダムの裸体について
愛は可能か
セックス開放論
近代文学における黒いエロス
童話のエロティシズム
エロティシズムを生きた女性たち
著者等紹介
澁澤龍彦[シブサワタツヒコ]
1928年、東京に生まれる。東京大学仏文科卒。マルキ・ド・サドをはじめ数多くのフランス文学を翻訳・紹介。その他中世の悪魔学(デモノロジー)、美術評論、文芸評論、独自の幻想小説など幅広いジャンルで活躍。『唐草物語』で泉鏡花賞、『高丘親王航海記』で読売文学賞を受賞。87年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
26
正常であるということは、同時に精神の貧困を示すことである。中公文庫が作者没後30年を記念して改版しました。何とも素敵な表紙に生まれ変わりました。2018/01/29
志波昌明
10
表紙が単行本の時の、澁澤龍彦の好きだった金子國義になって改版された。この表紙のほうが美しい。あとがきで本人も書いているように、女性に対して辛辣な意見もあるが、独特な美意識にひきこまれる。50年前に書かれたものだが古びていないし、今年クラナッハ展があったり、かえって新鮮に感じる。 2017/10/19
marmelo
6
存在を語るうえで誰にとっても避けて通れないエロティシズム。内なるそれに魅入られ、苦悶、煩悶、懊悩し、それを超克すること、もしくはそれに打ち負かされることから生まれる芸術や文学。支配・被支配、手懐けること、籠絡されること。退廃、破滅、死を含有する生の源泉。2017/11/16
ψ根無し草
6
エロ要素は皆無と言ってもいいくらい真面目な澁澤龍彦らしい性の哲学書。今読んでもまさか50年も前に書かれた書とは思えないくらいリアル。LGBTや性的マイノリティーの問題がこれが書かれた50年後に社会問題として取り上げられている事について、もし著者が存命だったらどう思われたのだろうか?今こそ読まれるべき良書だと思う。2017/11/12
ankowakoshian11
5
再読。改めて読むと執筆時点での澁澤さんのジェンダー観がなかなか手厳しい。といっても不愉快ではないのは常に分析的に自分をみつめている他者の視点を感じる文章のせいか。教養の知識は幅広く、エロティシズムというテーマに哲学、歴史、精神医学、古典など参照する分野が手広い。異常と正常の線引は難しい。一目惚れのトリガーはフェチ嗜好、胎内回帰論などの視点が興味深い。またこの時代において同性愛を肯定的に分析しているところが先進的なところかも(とはいえ日本は文化的に受入やすい下地はある)しかし現代ではややこしい話題ではある。2022/01/23