出版社内容情報
お菊はなぜ井戸端で皿を数えるようになったのか――それは、はかなくも美しい、もうひとつの「皿屋敷」。「おはなし」となったある事件を、独自の解釈で語り直す江戸怪談シリーズ第三作。
内容説明
いく度も奉公先を追われる美しい娘・菊。慾のない菊の姿はやがて、つねに満ち足りない旗本青山家当主・播磨の心に触れるが、菊の父親の因果や、播磨の暗い人間関係が、二人を凄惨な事件に突き落とす。数えるから、足りなくなる―欠けた皿と心の渇きに惑う人々が織りなす、今まで語られなかった「皿屋敷」の真実。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
1963年生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で第四九回日本推理作家協会賞(長編部門)、97年『嗤う伊右衛門』で第二五回泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で第一六回山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で第一三〇回直木三十五賞、11年『西巷説百物語』で第二四回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
19
番町皿屋敷をモチーフにした京極夏彦のお話。巷説百物語シリーズとリンクしているのでファンには嬉しいキャラクターも登場。中公文庫版は未読だったので久しぶりに読みました。懸命にそれぞれの形で踠きながら生きていてもみんな何かが欠けている。欠けた人間がお互いに惹かれあい拒絶しあい己に欠けた何かをそのままに抱きながら進展する物語。結末がハッピーエンドだとは全く思わないけれど喪失感と焦燥感に抱かれながら必死に己の形を示そうと存在し続けた姿には人間の悲しさと共に美しさを感じる。2017/11/08
二木弓いうる@デビュー作5/2発売!
6
皿屋敷の怪談を題材にした、悲劇の物語。ヒロインの菊に感情移入して読んでいたので、最後はとても切なく感じた。 読み終えてから、もう一度冒頭に戻って序を読んだ。改めてすごく良い本だなと思えた。2024/11/05
Yuka
4
700頁の大作を休み期間に充てていたけど2日で読み終わってしまった…!! 京極夏彦作品は実は初めて。「皿屋敷」はぼんやりと話は知っていたけれど、なんだか悲しい結末。最初はなかなか入り込めない気がしたけど、気づくと読み進んでいて不思議な感覚でした。 「足るを知る」ができていたのは菊だけだったのに、欲があったり虚無感があったり。時代的に抗えないものがあるのかもしれないけれど、ただあるがままに満足できないことでもたらされた悲しい結末でした。2023/07/07
yuka_iruka
4
残忍で残酷な最後なのに儚く美しい話でした。菊や三平の様に無垢であるがままにただ漠然と生きている方が、満ちた欠けたと煩悶しているお武家様より幸せなのだな。小股潜りの又市や徳次郎が絡んでいるから、もしや最後は菊や三平は穏やかにと思っていたのですが…最後の菊の言葉はなんったのでしょうか…2020/10/23
麻由
2
徹底的に「自分の論理」でしか動かない人たちによるスラップスティックコメディ&サスペンス。他者の論理を一切解しない人たちが自分の論理だけで話が進むとこうなる、という実験小説みたい。この分厚さでリドルストーリーかよ! と思わないでもないんだけど、まあそれも京極かなあ。少し時を置いて読み直したさはある。2022/04/05