内容説明
宋の時代の史書に散見する宋江が三六人の仲間とともに反乱を起こしたという記述は、中国民衆によって、一〇八人の豪傑が活躍する痛快無比な伝奇小説『水滸伝』となった!「現今の中国を理解するため」の必読書だと言う著者が、歴史と虚構を対比させてその魅力を解き明かす。
目次
第1章 徽宗と李師師
第2章 二人の宋江
第3章 妖賊方臘
第4章 宦官童貫
第5章 姦臣蔡京
第6章 魯智深と林冲
第7章 戴宗と李逵
第8章 張天師と羅真人
第9章 宋江に続く人々
著者等紹介
宮崎市定[ミヤザキイチサダ]
1901(明治34)年、長野県飯山市に生まれる。松本高校を経て、25(大正14)年、京都大学文学部史学科東洋史学専攻卒業。六高教授、三高教授、京都大学文学部教授を歴任。65(昭和40)年、停年退官。京都大学名誉教授。文学博士。専門は中国の社会・経済・制度史。89(平成元)年、文化功労者。95年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shimashimaon
6
吉川英治『新・水滸伝』は108星の豪傑が勢揃いする箇所で幕を閉じますが、70回本もまた同様なのだそうです。その後の物語を追加した100回本や120回本は、明末から清初にかけて成立したそうで、北宋時代には存在しないちぐはぐな表記があるとのことでした。70回本以外は水滸伝と認めないとする学者も中国にはいるようです。彼ら豪傑達は主に元下級官吏であって、民衆に近い立場にあったから、権力よりも民衆に寄り添う者であって欲しいという願望が作者不詳のまま文学になった、という説明が面白いです。司馬遷『史記』とは異なる所。2022/06/18
竜王五代の人
2
水滸伝の中の史実と関わる部分やその背景(宋代の社会体制とか政治風景とか)を語る本で、物語の流れは横に置いた形だが面白かった。ただ、取り上げられる人物が、ダメ皇帝徽宗・悪人童貫と蔡京・役立たずな頭領宋江(なぜ彼が首領たりうるのかのあたりは考え過ぎな気もするし、引き合いに出される劉邦はもっと人物が上な感も)とマイナスな人が多いのはどういうわけか。方臘の乱が長江下流どまりになったあたりの理由も興味深い。2022/08/02
bittersweet symphony
2
中国文学史畑の人が虚構作品を歴史薀蓄的に語るものは多いが、歴史学畑の人が虚構作品を歴史学側に引きつけた内容で語るものというのは意外に少ないのではないかという印象がある。一次資料文献の豊富な実例を駆使したその立ち位置ならではの話題が並んでいる。2017/07/01
in medio tutissimus ibis.
1
浅学ながら水滸伝の物語には直接当たったことはないし、その猟奇的なところから避けてきたきらいもある。だが、水滸伝愛好者である上に東洋史家である著者にその史実と虚構を開設されると、興味をひかれずにはいられない。と言っても水滸伝そのものではなく、公孫竜といういわばオリキャラを導入して物語中のパワーバランスを操作して、方臘と遼への戦の順番を入れ替え、梁山泊を方臘戦とその後の朝廷の命令という形で壊滅させた百回本の作者の意図である。その正体も定かではないから、結局面白おかしく推測する他はないのだが。2021/02/24
URI(病気養生
1
宋代で皇帝権力の一元化そして中国の資本主義の成立、芸術の熟成という三点が重なった時代に徽宗皇帝になったというのが宋の不運だったというのがわかった。2020/01/19
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