内容説明
その美しい速さ、比類なき鋭さ。こんな剣がこの世にあったのか―。突如現れた謎の刺客。ゼンは己の最期さえ覚悟しつつ、最強の敵と相対する。至高の剣を求め続けた若き侍が、旅の末に見出した景色とは?
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
作家、工学博士。1957年、愛知県生まれ。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、1996年に『すべてがFになる』(講談社)で第一回メフィスト賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
71
シリーズ完結。振り返ってみると、森さんの無機質な文体は空っぽのゼンという人間を語るのにとても合っていたと思う。一度記憶がリセットされ、それでかえって最強になるというのは面白かった。ノギさんはかわいそうだったけれど。ひたすら無自覚ゆえの女性泣かせなゼンでした。2017/03/28
niisun
50
あぁ~終わってしまった。“ヴォイド・シェイパ”シリーズがとても好きだったので、名残惜しいです。しかし、最後の五篇目に起承転結の“転”を、しかもかなり思いきった“転”を持ってくるあたり巧さを感じます。この小説、ゼンという純真無垢な主人公の“成長物語”でもありつつ、ゼンという名を借りた観念的な導き役を据えた“遍歴物語”でもある、ジャンルフリーな森さんらしい作品でした。剣の道と人の道を探す禅問答のような硬質な物語でしたが、唯一“色彩”を感じるノギさんという女性が、この小説最大の魅力を与えているように思います。2017/04/02
神太郎
33
これまで順風満帆な旅を続けて多くの学びを得たゼン。プロローグでそのたびに暗雲が。最強の剣士を前に敗北し滝つぼに落ちていくゼン。そして記憶喪失になって何者かすら分からぬまま。しかし、それが全をまた一つ成長させていくことになるのだが…。終盤にはゼンが立場が変わり窮屈さを感じる場面が続く。ゼンが選んだ道とは。彼にとってはそちらの道こそが剣の道であり、人生なのだと思う。母君には悪いけど、カシュウと生きた日々、旅の日々。忘れてしまった思い出かもしれないがそれが確かに今のゼンを育てた。終わるのが惜しいが大団円だ。2025/04/04
rio
33
突然の敵襲に戸惑うゼンだが、強敵の美しい刃筋に己の最期を覚悟する剣豪シリーズ第5弾。プロローグの怒濤の展開に一気に引き込まれ、思わぬきっかけから最強の剣士へと飛躍するゼンに驚かされました。第1弾から悩み続けてきた「考えない強さ」の答えが見つかったのかなと思います。4章後半からの展開はとにかく切なく、ノギの三味線シーンや鷹狩のシーン等とにかく泣けてきます。だからこそ自由あるエピローグの綺麗な終わり方が素晴らしかったです。2017/03/28
ち~
27
夜、何者かの急襲を受けたゼン。その中でもかなりの手練れである赤い面を着けた者との一騎打ちとなるが、相手は明らかに自分より手強かった。崖から転落し、貧しい姉弟に助けられたが記憶を失っていた。自分が何者か分からないながらもこれまで同様、常にあらゆる事に疑問を投げかけ、また新たな境地を切り開くゼン。3作目での提示で何となくこのラストは想像できたものの、この閉鎖された環境で今後ゼンはどう生きていくのだろうか?全5冊。ゼンとともに素晴らしい旅が出来た。2018/09/01