内容説明
舞台上で女優の足が、官能の道具から電話機へと変化を遂げる、そのエロチシズムへの感性。競走馬と比べられた女優の行く末について語る自在で起伏に富んだ話の運び。「永遠の謎と美」の存在である女性、その生き方や感受性、美意識を、映画、音楽、演劇、文芸など幅広いジャンルの作品を手がかりに読み解き、絹のように上質な文章で紡いだエッセイ集。
目次
第1章 回想の女優たち(スポーツを越える美学を―市川崑『東京オリンピック』;誘惑への回帰―『太平洋ひとりぼっち』と『江分利満氏の優雅な生活』の場合 ほか)
第2章 女のエロチシズム(都はるみはピアフである;宝塚歌劇は野球である ほか)
第3章 女性の幻想(女の足指と電話機―ひとり会『ストリッパー物語・惜別編』を見て;唐十郎作・演出の『蛇姫様・我が心の奈蛇』 ほか)
第4章 私も愛して(ベルが鳴ったら…寺山修司考;ハンマーは豆腐をくずせるか ほか)
第5章 香りにまつわる随想(香水の街;マチスの教会 ほか)
著者等紹介
虫明亜呂無[ムシアケアロム]
1923年、東京生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒。同大文学部副手を経て、『映画評論』編集部に籍を置き、そののち、文芸批評、映画評論、スポーツ評論、競馬エッセイなど多彩な分野で旺盛な執筆活動を行う。記録映画『札幌オリンピック』の脚本を担当した。83年に脳梗塞で倒れ、91年、肺炎のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ソングライン
17
人が生きるという事は、正義感や倫理感で生きているわけでなく、そこには快楽が伴っている。1970年代にスポーツ紙、競馬新聞紙に連載された作者の映画、演劇、文学、音楽、スポーツに関するエッセイ集です。戦前の可憐、純潔の象徴であった女優及川道子への思い入れ、美人女優リタ・ヘイワ―スの転落の人生、カースン・マッカラーズの小品「過客」の見事な紹介等、短いエッセイの中に現れる作者の人生観、女性観の鋭さに圧倒されます。読みたい本も増えました。2021/10/14
siomin
0
虫明は,いちばんの美文家だと思っています。そのエッセイが本書ですが,古い映画や小説の評論が中心で,私からとっては少々歯が立たない内容でした。しかし,昭和50年くらいのスポニチに,これだけ骨太の映画評論が載るとは,すごい時代だな。甘粕正彦は甘粕事件後にパリに渡り,当地で競馬三昧。当然負けが込み借金まみれ。その屈折を抱えつつ満州に渡ったという話はなかなかすごい。競馬で負けが込まなかったら,もしかしたら日本の歴史は変わっていたかもしれない。2023/01/27
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