出版社内容情報
恋する心はこんなにもカラフル。海外作家のラブ・ストーリー9編+本書のための自作の短編小説「恋するザムザ」を収録。各作品に恋愛甘苦度表示付。
内容説明
初心者の震えも、上級者の迷いも、「恋する心」に変わりはありません―村上春樹がセレクトして訳した海外作家のラブ・ストーリーに、本書のための自作の短編小説「恋するザムザ」を加えた全十編を収録。素朴な恋物語、屈折した恋愛…一粒一粒がこんなにもカラフル。とりどりの味わいを楽しむアンソロジー。★の数で作品のテイストを訳者が判定。恋愛甘苦度表示付き。
著者等紹介
村上春樹[ムラカミハルキ]
1949年生まれ。日本を代表する小説家であると同時に、アメリカ文学の優れた読み手として、カポーティ、フィッツジェラルド、カーヴァー、オブライエン、ペイリー等の作品を手ずから翻訳し、精力的に紹介してきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
98
私の好みはなんといっても第一話「愛し合う二人に代わって」(マイリー・メロイ)だ。甘く切ないストレートなラブストーリーである。「世の中には初心者向けの素直で素朴な恋愛もあれば、上級者向けの屈折した恋愛もある」 村上氏はあとがきにこう書いている。五七歳になる私が初心者向けの恋愛でもあるまいにと思う反面、それの何処が悪いという開き直りもある。やはり恋愛にはある種の熱が必要だし、いくつになってもワクワク感が欲しい。おそらく冷静になってみればそれは恥ずかしいことなのだろう。しかし、そもそも恋とはそういうものなのだ。2016/10/30
mocha
97
村上春樹翻訳の9篇と、自著1篇を収録したアンソロジー。いろんな国、いろんな時代の手に負えない恋の話。若者の盲滅法な恋愛より、苦い大人の恋話の方が印象に残る。時に滑稽で悲哀に満ちて、保身に汲々としつつも愛さずにいられない。村上氏の『恋するザムザ』はカフカの『変身』をモチーフとしたもので、シュールで面白かった。甘苦バロメーター付き。2019/03/29
aoringo
83
恋愛をテーマにした村上春樹さん翻訳のアンソロジー。自分がいいなって思った作品を村上さんが「練れた著者の手になる、練れた大人の愛の物語」と褒めていて一緒に共感できたのがうれしかった。でも一番はやはり村上春樹さん書き下ろし!カフカの『変身』を題材にしたそうだけどこれは未読なので何とも言えない。様々な愛の形を堪能できましたが、こってり甘々がお好きな方には少し肩透かしをくらうと思います。2020/04/29
佐島楓
65
村上春樹自選翻訳集+自作短篇という豪華な構成。「L・デバードとアリエット」がよかった。短篇映画を見ているようなスケール。ほかの作品も、春樹氏の訳らしく読みにくさは一切ない。素敵な作品集だった。2016/10/12
masa
60
「マスク越しのキス」こうして文字にすると、なんだかとてもロマンティックで魅了される響きだ。けれどもそれが全然いいものじゃないってことを僕らはもうすっかり知ってしまっている。だからこそ、文学的恋愛というものの価値が確かにあるということに気がつくのだ。ときにことばが構築する想像と現実との隔たりに傷ついたりもするけれど、やがてはそれすらも時間の中で都合よくリミックスされる。結局のところ、僕らの記憶は何だってよかったことにしてしまう。最後には全部、文学的恋愛にしてしまうのだ。だから思い切り誰かを好きになればいい。2022/03/05