内容説明
満州事変時の吉林総領事、上海事変直後の上海総領事、そして日中戦争勃発時の東亜局長と、悪化の一途を辿った日中関係の最前線にあって、軍部独走に抗しつつ和平の道を模索しつつも、最後は敗走のビルマ大使として終戦を迎えた外交官が、日記をもとに綴った第一級の記録。
目次
発端
外務省に奉職
広東在勤
天津在勤
サンフランシスコ在勤
ワシントン在勤
メキシコ在勤
本省勤務
イギリス在勤
吉林総領事時代
上海総領事時代
シャム公使としての半年
東亜局長時代―中日事変
オランダ公使時代
ブラジル大使時代
特命大使時代
ビルマ大使時代
依頼免官―追放
結尾三題
著者等紹介
石射猪太郎[イシイイタロウ]
1887年(明治20)、福島県生まれ。上海の東亜同文書院卒業。外交官試験に合格し、広東領事館をはじめに、ワシントン、メキシコ、ロンドン等の大使館に勤務。続いて吉林、上海各総領事、東亜局長となり、日中戦争中の困難な局面に立たされる。その後、オランダ公使に、続いてブラジル大使に就任。最後はビルマ大使として終戦を迎えた。戦後は幣原平和財団理事として幣原喜重郎の伝記の編纂に当たった。1954年(昭和29)2月、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヤギ郎
14
外交官・石射猪太郎の回顧録。就職先が決まらず、とりあえず外交官試験を受験するところから、石井の外交官人生がはじまる。上海の大学(東亜同文書院)を卒業していることに若干のハンディキャップを覚えながらも、図書館に籠りながら試験勉強をし、無事に合格をする。なんだかんだで外交官になったわけなので、仕方なしに業務に励むことになる。海外旅行は船、通信は電報という時代の中、ディプロマットとしての交渉術を身に着けていく。戦後史に名を遺す大物との出会いを通して、自身を磨いていく。外交官ならではの苦労話もあって面白い。2020/11/28
若黎
6
読み物としては面白い。2025/02/18
船橋二等卒
0
著者が官立大学を出ずに外務省の傍流を生きてきたからか、身も蓋もない書き味が特徴的。 最後一節が非常に強烈で思わず笑いが出た。2016/06/05
はちめ
0
日本が日中戦争に突入していく過程が当事者である外交官の目によって語られており、参考になるだけではなく読み物としても十分面白い。森島守人と東亜局長の前任後任の関係であることも興味深い。2015/10/11
linbose
0
★★★★★ 日中戦争時に東亜局長を務めた外交官の自伝。気骨ある外交官だったようだ▼国際協調主義、平和主義、対華善隣主義という霞ヶ関の正統外交の集大成が幣原外交だった。その真価は、諸勢力の圧迫に屈しない信念にあり、幣原後は信念と勇気を欠くことで衰微したと▼近衛、広田らは鋭く批判され、対照的に芯の強い人と評されるのが幣原のほか宇垣一成(外相)。別に革新派(軍べったり)の白鳥ら▼大衆も支持する軍の暴走を止められたのかはパーソナリティにのみ帰せられるものではないけれど、外交や軍を巡る人物評は興味深い▼解説加藤陽子2024/07/12