内容説明
戦場で命を落とした者たちはなぜ、霊魂となってもなお祖国へ帰ろうとするのか。ガダルカナル、ニューギニア、フィリピン、硫黄島、朝鮮半島、そして沖縄。さまざまな場所で、戦死者たちを、その家族たちを長年にわたり取材してきた著者が“怪異譚”を通して綴る鎮魂の記。
目次
亡霊部隊の帰還
ガダルカナルの怨念
「餓島慰霊の旅」での怪談
ニューギニアからの遺言
ムンダの奇跡
頭が痛いブーゲンビル・墓島
ミレーの呼び声
父をたずねて三〇〇万キロ
イリアンへ花嫁人形
フィリピン・悲島の人魂
幻影乗せた慰霊船
硫黄島奇々怪々
沖縄夢幻
原爆死の兄、還る
著者等紹介
田村洋三[タムラヨウゾウ]
1931年、大阪府吹田市生まれ。同志社大学文学部卒業。読売新聞大阪本社社会部次長、写真部長、社会部長、編集局次長、編集委員を歴任。93年、定年退職。現在、ノンフィクション作家。編著書に『新聞記者が語りつぐ戦争』(全二〇巻、読売新聞社、85年、第三三回菊池寛賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かおりんご
44
読み友さんのご紹介。怖い話なのかとおもっていたら、ガ島を始めとする日本兵が玉砕した島々や、戦闘に関する話でした。話が行き来するため読みにくさを感じましたが、今まで知らなかった戦闘地域も出てきたので、勉強になりました。死んだ魂が海をこえ、日本の愛する人のところに戻ってくるなんて、悲しみしかありません。サイパンだかグアムで、友人は日本兵らしき幽霊を見たと言っていました。アジア諸国には、沢山の御遺骨が残されていると言います。戦後70年経っても、まだ日本に帰国できない御遺骨を、一日でも早く収拾して欲しいと思いまし2015/09/22
roatsu
11
国に残す者達への万斛の思いと共に戦地に斃れた英霊と、幾星霜を経ても大切な父、夫、息子の最期を知り弔ってあげたいと願い自ら行動を起こしたご遺族達の真心の貴さに何より心うたれる真摯なドキュメントだった。互いに思い合う肉親や戦友の間であれば生死を越えた怪異というより奇跡と言えることも起きて何も不思議ではない。一方で戦後、日本政府が続けた戦没者への冷酷で無責任な施策と少なくない国民の戦史と非業に斃れた同胞への無知・無関心な姿勢には改めて憤りを覚える。戦後70年の今、まず真摯に反省すべきはこの自堕落さではないか。2015/08/01
yamatoshiuruhashi
9
副題「戦争の怪異譚」とある。戦場、戦跡の怪談集かと思ったがそれが主題ではなかった。戦後の繁栄を享受する日本が、いかに悲惨に散った人々の犠牲の上に成り立っているか、そしてその霊魂に感謝し慰めることを怠ってきたかという事実を、戦没者の無念の形で教えてくれる書物だ。今よりも交通の便が悪い時代に遥か彼方で亡くなられた人々をなんとかして祖国へ帰ってもらえるようにしたい。2016/02/29
くみっふぃー
8
戦争(大東亜戦争)の中で起こった怪異譚とそれぞれの戦場の記録。戦後70年。私の祖父も戦死し、その最期がわからないままである。人は亡くなっても、霊魂となって、肉親、縁者のもとに帰って来る。大変重い内容だったが、二度と戦争をしてはいけないという思いを強くした。2015/08/13
おっくー
7
友人からの推進本。怪談から始まり、出兵された方々の遺族や当時、軍にいた人の取材を元にした本。平成生まれとして、同年代の戦争に対する理解に対して残念に感じる中、遺骨収集にはあまり関心がなかったが、関心が湧き、ぜひ、遺骨収集は続けて欲しい。そして、自分も東南アジアの古戦場に行きたい。2016/02/21