内容説明
フィリピン攻略戦でマッカーサーを敗走させたものの、バターン半島に立て篭もった敵を攻めあぐね、ついに大将の夢叶わず、予備役に編入された本間。敗戦後、捕虜虐待等の責任を問われた夫を救うため、妻・富士子はマニラに飛び、軍事法廷の証言台に立った―理性的で情に厚い“悲劇の将軍”の生涯を描いた本格ノンフィクション。
著者等紹介
角田房子[ツノダフサコ]
1914年東京生まれ。福岡女学院専攻科卒業後、パリに留学。85年『責任―ラバウルの将軍今村均』で新田次郎文学賞受賞、88年『閔妃暗殺』で新潮学芸賞受賞。その他、著書多数。95年「日韓の歴史・三部作」完成を機に東京都文化賞を受賞。2010年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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A.T
31
角田さんの大日本陸軍 軍人伝を読むのはこれで4作品目で最後。名残惜しい。あの時代の悪、日本を大敗戦へ突き落とした集団の中にも、こんな人生を生きた家族がいた。心が救われる思いで読了。あくまでもドキュメントを貫く作風ゆえ、筆さばきは至ってクールなのにも関わらず、ラスト本間中将が遠くフィリピンの地で12人の刑執行者から受けた銃弾と、東京に残された妻の言葉、長女の口述筆記のシーンがかぶさり、号泣。戦犯をひとくくりにできない所以がこの一冊に残されている。2020/09/13
おい
7
エリート軍人である主人公の人間性がよく分かる。平時ではその聡明さ純粋さが好転するものの、ここ一発の勝負どこや窮地では、もろさが現れる。平時と勝負どこで人間の用い方を代えないと、組織にも本人にも不幸である。また本書により辻政信の残虐性と彼を重用し続けた日本陸軍の組織力の脆弱さもあらためて感じられる。 ★★★★2015/10/04
鈴木貴博
5
本間雅晴伝。佐渡出身、欧米通で、英国駐在武官、秩父宮御附武官、台湾軍司令官等を歴任。日米開戦時、第十四軍司令官としてマニラを占領し、バターン・コレヒドールを攻略、マッカーサーを敗走させるが、戦後、“バターン死の行進”事件の責任を問われて軍事裁判にかけられ刑死。この本は書かれた昭和46年時点で多く存命だった関係者に取材し、公私に亙る本間の生涯を明らかにする。やはりクライマックスはフィリピン戦から軍事裁判で、“マッカーサーの復讐”を浮き彫りにするとともに、証言台の妻富士子さんの姿と、夫婦愛・信頼関係が印象的。2020/04/04
unpyou
5
フィリピン攻略軍司令官として働き、マッカーサー麾下の米軍を破るも「バターン死の行進」の責を負わされ戦犯裁判で銃殺となった本間雅晴。国際感覚に富む理性派で、和平工作を多数試み、戦場での残虐行為を許さなかった彼が組織的な捕虜虐待を命じることは有り得なかったが、マッカーサーの復仇として死刑以外の結論なき戦犯裁判に臨む事になる。有能さの一方、泣き虫と呼ばれるほど優しく人間味あふれる面をもっていた彼の最期の日々を彩ったのは、必死の弁護を試みる愛妻、富士子とのまばゆいほどの夫婦愛だった…。涙なくしては読めぬ傑作評伝。2015/06/20
i1470
3
本間中将伝記 読みごたえのある、ノンフィクション 一人の優秀な軍人が、太平洋戦争終結まで、いかに生きたか。 マニラ軍事法廷の妻富士子とのやりとりは、とても悲しい。2018/08/07
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