内容説明
半世紀以上にわたって昭和天皇の台所を預かり、日常の食事と宮中饗宴の料理を司った初代主厨長の一代記。若き日のフランス修業時代、宮内省大膳寮で学んだ天皇の嗜好、宮中のしきたり、また外遊に同行した際の体験などを語る。日本の西洋料理界に大きく貢献した著者の料理に対する知識と探求心が窺える、貴重な食味随筆。
目次
黄金の箸と黄金の皿
ヨーロッパ庖丁修業
大膳頭 福羽先生
果物の味
天皇のお食事
中国の謎
饗宴にうつる歴史の影
終戦前後覚え書
日本の美味
人生は料理なり
附・完全な食卓作法
著者等紹介
秋山徳蔵[アキヤマトクゾウ]
1888(明治21)年福井県武生生まれ。1904(明治37)年、華族会館料理部に入り、筑地精養軒、三田東洋軒を経て、1909(明治42)年渡欧、フランスで料理を修業、1913(大正2)年帰国、同年宮内省大膳寮に就職、厨司長、初代主厨長となり、大正、昭和の二代天皇家の食事、両天皇即位御大典の賜宴、宮中の調理を総括した。1971(昭和46)年フランス料理アカデミー名誉会員、パリ調理士協会名誉会員、フランス主厨長協会会員となった。1972(昭和47)年辞職、宮内庁御用掛となった。1973(昭和48)年、勲三等瑞宝章受章。1974(昭和49)年没。享年85歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小梅
90
最近またドラマになったが私は昔の堺正幸が主演のドラマしか観ていないが、大変興味深く観た記憶があります。昭和天皇の優しい人柄も伝わり、最近観た映画「日本の一番長い日」で昭和天皇を素晴らしく演じた本木雅弘が浮かびました。同じ時代に生きていたら是非会って食べ物の話しをしてみたかったな…2015/11/18
to boy
26
期待以上にすばらしかった。大正から昭和まで主厨長を勤めた著者の人柄がにじみ出ています。料理に対する真摯な態度、昭和天皇に対する尊敬のまなざし、早く亡くなられた奥さんへの愛情、そして日本の各地の料理への深い造詣と味に対するこだわりなどがビシビシと伝わってきます。吉川英治さんの序文は思わず読み返してしまいました。2016/11/16
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
25
▼天皇の料理人として最も有名な人。▼ガラス窓を叩き割って、秘密の献立表を盗み出したり、日本大使館でモノ盗んだり、寺の墓石を倒してみたりと、人間性に難ありではないか。自分でも「人間としても、短気で、かんしゃく持ちで、わがままで、しようのないやつだと思っている」と書いている。エキセントリックな人だと感じた。▼酒や魚の蘊蓄について、深みは伝わってくる。造り酒屋や利酒の話などは、リラックスして読むことが出来る。疲れていても、刺激がなく、頭を使う必要もない。▼熱愛し続けた先妻との死別の話は非常に悲しい物語である。2021/12/08
mikeneko
13
ドラマ化されている原作は秋山氏をモデルとした小説だけどこれはご本人執筆。出演中の主人公に比べるとかなり、料理に対して頑固一徹、真実一路といった方のようで、たとえ相手が身分の高い方であっても間違ったことは正す!という正統派。それだけに太平洋戦争後の「日本という国が囚人なんだぞ」という敗北感は計り知れない。最後のテーブルマナーについてはこれさえ読めば!のHow to本にもなれそうな詳細さ。左右に持ち手のついた器に入ったスープのスプーンは熱さ加減を確かめるためのもので、飲む時は直接、というのはびっくり!2015/05/21
ほうすう
12
大正・昭和期にかけて天皇の料理番として活躍された方の著書。料理人として優れた方だったと思うのだが随筆家としてもまた優れた文才を持たれている。英国料理は肥らないような食べ物、米国料理に対しては酷評など各国の特徴を示している個所も面白ければ、昭和天皇は猫舌だったといった小さなエピソードなどとにかく読みごたえがある。また序文が吉川英治が寄稿したものなのだが秋山氏の人柄やお互いの関係性が目に浮かぶようでほっこりとした気分となる。わずか数ページなのに…吉川英治はすごいな…とこれまた舌を巻くしかない。2024/03/17