内容説明
イケなくなった売れっ子ホストの兄、ひたすらビルに登り続ける弟、そして元美人の太った女―「この世界は膨らませたコンドームのよう」と感じる兄・ケイを襲った下半身の不調が、いつしか3人を結びつける。他人との距離感に悩み、無垢にしか生きられない人人の、ぎこちなくも温かな彷徨。
著者等紹介
新井千裕[アライチヒロ]
1954年新潟県生まれ。早稲田大学法学部卒。新宿区役所職員を経てコピーライターとなり、86年「復活祭のためのレクイエム」で第二九回群像新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おしゃべりメガネ
144
ふとしたキッカケからハマりはじめた新井さん作品です。とにかく世界観が本当に独特で、なかなか他の作家さんや作品では味わうコトのない読書時間を過ごせることに喜びを感じます。あらゆる意味で’イケ’なくなった売れっ子ホストの兄とひたすら高い所に登り続けるちょっと変わった弟の兄弟が送る生活はフツーのようで、なかなか不思議な生活を送っています。そこに現れた水を飲むコトが大好きなちょっと太めの女性もさらに不思議で、とてもインパクトがあります。読んでいても読了しても謎は深まるばかりですが、不思議とイヤにはならないです。2018/06/12
TSUBASA
21
あらゆるものを図や記号で表すことに喜びを感じるケイと、建物の屋上へ上り、登るまでの軌跡を記録するケイの弟、水をたくさん取り込むことで空虚な自分を満たそうとする「水の女」。一般人とは乖離した感覚にとらわれながら生きて行く3人の話。常人とは隔たった孤独感が漂うのだけど、人物が淡々とし過ぎてて深くは入り込めなかった。彼らは「形」にとらわれた人々なのだろう。図や記号はもちろん、線で結ぶ事で立体的な形を再現する軌跡、水という不定にして自由な形。彼らは「形」を通して世界を自分の中に取り込みたかったのかもしれない。2015/02/19
あ げ こ
11
イメージは膨らみ、言葉には尾ひれ。軽めの言葉を添えられても、笑いには、中々繋がらない。凡打が延々と続くような煩わしさ、処理し難く、受け流すほかのない言葉の生ぬるさ、だが、それはそれで惰性、流れるよう、結局最後まで読んでしまう、不思議。意味のない思いつきを、意図のない連想を、研磨することなく、放出し続けているような言葉のくどさは、滑らかに生きて行くことが出来ないものたちの、捻れに捻れた苦痛の厄介さや、不器用な率直さを、ぼんやりと、思わせる。重さはない、厚みもない、爽快さもない、ただ少しだけ、温かい。2015/01/02
リョウ
1
妙に律儀で「社交性のある」ホストと、高いところにのぼってその軌跡を記録し続ける弟、水で自らを見たそうとする水の女。不思議な登場人物によって紡がれる不思議な物語。2019/04/16
R176
0
全然面白くなかったわけではないけど、物足りない★★★☆☆2015/01/11