内容説明
ある夏、変わり者ぞろいのダレル一家は明るい日の光を求めて英国を抜け出し、ギリシアのコルフ島にやってきた。末っ子のジェリーは豊かな自然、珍しい虫や動物たちに夢中になるが、数々の騒動と珍事件をまきおこす―訳者をして「ここに溢れる幸福感につられてギリシアに渡」らせしめた、おおらかでユーモアに富む楽園の物語。
著者等紹介
ダレル,ジェラルド[ダレル,ジェラルド] [Durrell,Gerald]
英国のナチュラリスト、作家。1925年インドに生まれ、英国を経て、八歳の時に家族と共にギリシアのコルフ島へ移住する。その後、英国のウィップスネード動物園やジャージー島の野生生物保護トラストの仕事にたずさわるなど、動物保護活動に献身した。1995年没
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年、北海道帯広市生まれ。旅と移住が多く、ギリシアには75年から3年間滞在。詩、小説、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)等多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
132
イギリスは美しい国だけれど、そこからギリシャの島に行くと、空や海の青さは果てしなく、植物や虫の色は鮮やかだったのだろう。。南国はまさに虫たちの天国。のびのびとあちこちに生きている。それに目を輝かす少年の心の高揚は、本当は虫の苦手な私をも楽しませてくれる。子供の視点で虫たちの生活を見るのは、まるで映画のようだった。何となく手にとったが、南国行きの旅行がキャンセルになった今年の夏に、南国の夏の空を味わわせてくれた。自然と青い空と生き物の素晴らしさがつまった本。2016/08/18
まふ
114
英国の有名なナチュラリストである作者のギリシヤ、コルフ島における家族の自然体験記。大らかな母親と自由に育った息子3人・娘1人が様々な体験を積み上げて成長してゆく。大半は島の動物を中心に物語は進むが、島の人々や家庭教師などの登場人物は誰もが楽しく、世知辛い話題もなく、すべてが愉快に進行してゆく。お母さんのマダム・ダレルが傑物であり、4人の育ち盛りの子供たちを柔らかく、大きく包み込んで生活を楽しんでいる。いわば、夢のような世界であり、楽しい読書の時間が過ごせた。G483/1000。2024/04/10
はっせー
112
かなり面白かった! 動物たちとの関わりや生態は勉強になるものが多かった。だが、それ以上にダレルの家族たちのキャラがすごく豊かであった。かなり変わっている人物が多く笑いそうになる部分もありながら動物たちについても触れられていて、そのバランスがとてもよく読みやすかった。ダレルの本はあまり多くないので違う作品の新訳も早く出てほしいと思った!2019/05/08
mocha
105
イギリスからギリシャのコルフ島へ移住した、ダレル一家の騒動記。生き物大好きなジェリー少年にとって、島はまさにパラダイス。ありとあらゆる生き物を部屋に持ち込み、その度てんやわんやの大騒ぎになる。夜光虫をまといながらイルカとふれあい、蛍の乱舞を見るシーンや、白百合が群生する湖の畔でのピクニックは特に美しくてうっとりした。自然を描くのに様々な比喩が連ねられていて、極彩色の万華鏡を覗くような読み心地。のどかな時代の、本当に幸福な場所に出会えた。2016/04/10
NAO
83
虫の描写は虫が嫌いな人にはちょっと辛いところがあるかもしれないが、虫好きにはたまらないし、動物とのエピソードも興味深い話が多かった。そして、花の描写の美しいこと。ちょっと大袈裟だが、彼の美しい描写によってこのギリシアの島は人々の心に残る楽園となったのだともいえるのではないだろうか。また、のちに『アレクサンドリア四重奏』をはじめとした名作を書いた長兄ロレンス・ダレルが、コルフ島を紹介されたり、次々と芸術家仲間を島に呼び寄せる行動から、芸術家たちの交流の一端を垣間見ることができて、とても興味深かった。2017/10/21