内容説明
ある日「阿国歌舞伎」「天下一」の幟がはためく小屋に、澄んだ笛の音が響く。そこには、洛中に無双の大かぶき者と噂された名護屋山三の姿があった。やがて訪れる、最愛の人との別れ、歓喜も悲哀も慟哭もすべてをこめて、お国は踊る。日本芸能史の一頁を壮大なスケールで描く感動の大作。芸術選奨文部大臣賞、日本文学大賞受賞作品。
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931年(昭和6年)和歌山市に生まれる。東京女子大学短大英語科を卒業。在学中、『演劇界』の懸賞論文に応募して連続入選。同人雑誌『白痴群』をへて第十五次『新思潮』同人となる。文学界新人賞候補、また芥川賞候補となった「地唄」以来、次々に意欲作を発表、『華岡青洲の妻』により女流文学賞、『出雲の阿国』により芸術選奨文部大臣賞、日本文学大賞、婦人公論読者賞を受賞。小説家、劇作家、演出家として広く活躍をした。1984年8月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ソーダポップ
35
「阿国歌舞伎天下一」の幟がはためく歌舞伎舞台で運命に翻弄されながらもお国は踊り続ける。時代は、豊臣から徳川へと移り変わりお国も運命のように、生まれ故郷の出雲の斐伊川に帰ってくる。そして「父は鉄穴師、母は村下の娘」と、つぶやきながら最後にお国の胸に去来したものは何だったのだろうか。「花籠に月を入れて 漏らさじこれを 雲らさじと持つが大事な」最後のこの唄がとても印象的でした。圧倒的なスケールで描く感動の大作でした。2021/08/01
ken_sakura
16
酔った♪( ´▽`)「好き」の一念で良い時も悪い時も踊り抜いた阿国の一代記。阿国の才と情念、傍らに傳介の純情。阿国を挟んで、才あるお菊、才なきお松の対照。阿国の男、三九郎と名護屋山三。悪役九蔵の活躍。有吉佐和子の才が走らない、才の溶けた剛の一品\( ˆoˆ )/少し泣いたラストはいつも通り素晴らしい(対に、物語の始まりが頭抜けて上手い隆慶一郎が思い浮かんだ(^。^))旧漢字で出版した中公文庫も褒めたい(雰囲気あった。随分ググったけど(^_^))どことなく物語の中の阿国に作者有吉佐和子自身を感じた。15冊目2017/05/17
RED FOX
15
「斐伊川の瀬の上で跳ねながら水を汲んだ時を思い出せ。あれが私らの踊りの源じゃ」時の権力者の前で踊りつつ民衆の歓声を浴びて踊り狂う方を好む阿国。歌舞伎幟を日本中に真似され騙され辿り着く終盤に感動。2024/03/18
とし
11
久しぶりに面白い歴史小説を読んだ。「天下一の女」と呼ばれるまでになったお国だが、その後の歩みも決して安泰ではない。個性豊かで万華鏡のような人間模様がすごく面白かった。三九朗やお菊に同情はできないが、名古屋山三の懊悩とその最期は切なかった。死ぬまさにその日まで踊り続けたお国の生き様は哀しくも見事で、その人生を創造し描き切った作者の手腕には素直に脱帽。2014/08/19
たかっさ
9
阿国に比して、なにかしらに縛られている男達のなんと不自由なことか。また、それゆえに阿国はどの男とも"普通の"?幸せには至らないのだろう。2025/05/31
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