内容説明
明治の官僚はみな、立派なヒゲをたくわえていた。いつから彼らはヒゲを剃ったのか?霞ヶ関に官庁街が成立してから百余年、内務省解体や行革による省庁再編など、その器は変化し、時には批判に晒されつつも、強靱な生命力で生き延びてきた「官」の本質とは何か。ユニークな視点で描く日本官僚史。
目次
プロローグ ヒゲから坊主まで
1 パーキンソンの霞ヶ関
2 老公爵の青春―高文官僚と国際潮流
3 出世の構図(1)―成績と人物
4 出世の構図(2)―官僚・政治家・記者
5 天皇と教祖たち―「革新官僚」横流の時代
6 占領はお召し列車に乗って―日米官僚の相互乗り入れ
エピローグ 官僚と近代の終焉―官僚と三つの波
著者等紹介
水谷三公[ミズタニミツヒロ]
1944年三重県生まれ。東京大学法学部政治学科卒業。東京都立大学教授を経て1998年より國學院大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
6
軽妙な語り口で日本官僚史を語り尽くす。官僚の証言を多く引用し、日本の官僚機構に独特の風習や政治に翻弄された官僚たちの悲喜こもごもが面白い。個人的に第六章「占領はお召し列車に乗って」という章名は敗戦に伴う「占領」という国体変更を的確に表わしていて思わず膝を打った。政党色が強まり、二大政党の盛衰が自己の栄達に直結する内務省、その専門性ゆえ比較的政治色が付かず、政治家も手を出すことを控えていた大蔵省の対比は、現在の財務省と想起して比較すると更に面白いだろう。2019/08/25
歴史好き
4
初版公刊から二十余年が経過したものの、本書は今なお貴重な近現代日本行政史の通史的文献である。官僚のヒゲの変遷に始まる構成が示すように、本書は軽妙かつ独特な筆致から官僚の風貌を語っている。その豊かな内容は、読者に大きな満腹感を与えてくれる。牧原出先生の書評論文にある通り、史料引用に弱点があるものの、「解釈に幅のある発言をあえて引用することで…事実の周辺に漂う風聞の存在をも読者に伝えようとしている」(牧原2000:170)。そして、その路線は初版公刊後の近世「よしの冊子」の分析に、より鮮やかに現れるのである。2021/01/22
すのす
1
官僚ネタ本として読了。明治以後から遡るので、古い旧憲法下の話もかなり多い。戦後の話はそこまでないので、歴史を知るという趣が強いが、参考とされた書籍等も多く、なかなかの情報量。筆致も軽妙で、味気ない政治史とは違った形で、日本行政を振り返るようなこともできるかと。2020/08/10
Kenji Suzuya
0
明治維新期からバブル頃までの官僚のあり方をエピソード主体に綴っていく。著者が近代を主な研究対象としていること、秦郁彦のまとまった研究に依拠していることなどから、戦前部分についての記述は読みやすく理解しやすい。しかしながら戦後部分については確かな研究に依拠できなかったのか、印象論に過ぎない記述も多かった。総じて、エピソード中心だし語り口は軽妙で面白いものの、記述内容の確からしさについては心許ない、と評価できるか。2016/05/03
WS
0
官僚の歴史を振り返る名著。髭などの身なりから住まい、給与、生活習慣等様々な側面から官僚の歴史が述べられている。2022/12/06