内容説明
人は無だ。なにもかもない。ないものばかりが、自分を取り囲む―ある静かな朝、師から譲り受けた一振りの刀を背に、彼は山を下りた。世間を知らず、過去を持たぬ若き侍・ゼンは、問いかけ、思索し、そして剣を抜く。「強くなりたい」…ただそれだけのために。
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
作家、工学博士。1957年、愛知県生まれ。某国立大学工学部助教授のかたわら、1996年に『すべてがFになる』(講談社)で第一回メフィスト賞を受賞しデビュー。以後、続々と作品を発表し、人気を博している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
134
森氏の初時代小説。しかも剣の道に生きる若き剣士の成長物語とも云える剣豪小説である。純然たる日本を舞台にした小説なのに題名は全て英語というのが森氏らしく捻くれて良い。主人公ゼンはある意味森作品では典型的なキャラクタと云える。世間馴れしていないので相手のリアクションに対して非常に鈍感である。彼の生き方は全て剣のためにあるからだ。狭い世界で生きてきた彼が初めて海を目の当たりにしたことでさらに広い世界を意識する。それは彼の目指す道の果てだ。ゼンの旅は始まったばかり。彼は今後どのように成長していくのだろうか。2024/07/01
ケンイチミズバ
93
あーもう、ゼンのバカ!なんて野暮な。せめてイオカの手ぐらい握って。人との会話に戸惑い、反省し、悩んでる。傷つくのが剣と同じだなんて言っちゃってる。山を下りて早々に巻き込まれてしまったサナダ家での出来事は面白く、ゼンのこれからを想像するとワクワクした。ただ、この巻はフォグ・ハイダの前なので、読む順序としては逆です。惜しむらくは、イオカさんの居合いとの立ち合いが見たかったな。大勢がきちんと剣の道を目指し、完全に習得すれば、おそらく、皆が戦うことを避けるようになるはず。そうならない現実が・・・。2016/05/09
ゆんこ姐さん@文豪かぶれなう
80
かなり眠らせてた一冊。森博嗣初の時代小説。といっても読み始めてからしばらくしないと、時代物だとは分からない構成。主人公はゼンという侍。師匠を亡くし山を下り旅をする。出会い、別れ、考えて、気づき、常に問う。生きることとは、死ぬこととは、存在の価値とは。ただ、強くなりたい。それはどうしてなのか。かなり哲学的な内容で読む人を選ぶ本だという印象。私にとっては、出会ってよかったと思える本だった。文庫は三巻まででているようなので、早速明日にでも二巻を入手したい。2015/03/30
jam
69
どうしたって吉川英治「宮本武蔵」を思わずにおれない。著者なりにインスパイアされての作品ではないかなどと夢想。井上雄彦「バガボンド」も然り。優れた作品はそうした系譜を産むのである。吉川英治「宮本武蔵」は、私の愛読書のひとつ。道を究めることの哲学を昇華させ、なおかつ物語として完璧。清廉な無常感がある最後の一文が秀逸。このためだけに長い旅路があったのではないかとさえ思ってしまう。あれ?アタクシとしたことが、宮本武蔵のれびうに・・・。ということで、つまりは次も読むよこのシリーズということでした。2024/02/16
ソラ
64
森博嗣の剣豪小説。最初は意外に思っていたけれど、読んでみたら良い意味でやっぱり森博嗣だなと。単行本で読んだときはあまりいいとは思わなかったけれど改めて読んでみると良かった。2014/05/31