内容説明
国家による究極の権力行使でありながら長らく一切の情報が公開されることのなかった、死刑―。厚いベールに包まれたその実態に迫り、あらゆる角度から検証して新聞連載時より大きな反響を呼んだドキュメンタリーの傑作。文庫化にあたり追加取材を行って改訂増補した。
目次
第1章 執行の現実(宮崎勤死刑囚執行の朝;一三〇年続く絞首 ほか)
第2章 かえらぬ命(オウムの凶行;焼け残ったブルガリの腕時計 ほか)
第3章 選択の重さ(無期を破棄した理由;反省を見極める裁判官と遺族の目 ほか)
第4章 償いの意味(命の償いを求めた三二万人の署名;母を殺した父と子の思い ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinupon
77
死刑存続、死刑反対、それぞれの立場の中で語られますが、死刑とはいったい何なんでしょうか。人が人を裁き、そして刑罰としての死刑を確定し実行する。 今日のヤフーニュースには「サリン遺族が死刑立ち会いの要望」とのニュースが出ていました。制度としての死刑を真剣に考えるべき時です。2017/03/14
kochanosuke
21
良書と思う。「○○新聞社会部」とか「○○新聞○○班」などがまとめた本には良い本が多い気がするけど本書もそう。あまりにも知らないし、今までニュースに触れても素どおりしてきたように思う死刑という制度を考え、死刑の実態を知るきっかけとするのに、いの一番に読んでよかった本だった。2013/05/19
gtn
8
死刑制度存続の理由は、遺族感情への配慮が大きい。数々の死刑執行事案。遺族はほぼ一様に、ほっとした、けりが付いたと漏らす。しかし中には、意に反して「まるで手の中で生きた虫を握りつぶしてしまったような、ざらっとした嫌な気持ち」を感ずる者もいた。人の命が不自然に消されることへの自然な感情かもしれない。2019/03/25
mutante
6
どう考えても死刑にされるべきであろう殺人者が死刑に至るまでをルポしているが、ただそれだけの本。これを読んでも死刑に反対する反対派の人間もいるのでしょうか。死刑反対派って気持ち悪い‥。2013/05/02
うたまる
4
もし私が魔女裁判の歴史を持つ欧州に生まれていたら反対派になっただろう。同様に杜撰な裁判で冤罪を量産する米国に生まれていても反対派になっただろう。しかし、ここは日本だ。今まで堅実に死刑制度を運用してきたではないか。確かにエラー(冤罪)の可能性は残る。だがそれを理由に廃止と言うなら、交通機関だって、医療行為だって、建設工事だって止めるべきだろう。結局、政治イシューにしたがる人がいるだけの話。そういう人たちは第一に被害者支援を語るべきなのに加害者支援を優先する。そうして被害者と遺族を二重三重に苦しめているのだ。2015/12/05