内容説明
あどけない美少年フォンチートに翻弄される継母ルクレシア、妻を女神のように崇拝する夫のリゴベルト。密やかに、優雅に進行する危険な三人の関係と、神話や絵画から紡がれる幻想が重なり合い、思いもよらぬ結末へと導かれていく。ノーベル賞作家が描く、香りと色彩に充ちた華麗なエロス的世界。
著者等紹介
バルガス=リョサ,マリオ[バルガスリョサ,マリオ][Vargas Llosa,Mario]
1936年、ペルー、アレキーパ生まれ。59年『ボスたち』でデビューし、63年、『都会と犬ども』でラテンアメリカの作家としての地位を確立。2010年ノーベル文学賞を受賞した
西村英一郎[ニシムラエイイチロウ]
1949年、三重県生まれ。京都大学文学部卒業。青山学院大学大学院文学研究科修士課程修了。中南米史、中南米文学専攻。国際武道大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
163
バルガス=リョサは、私にとっては『緑の家』に続いて2作目だが、随分と作風が違うようだ。ただ、ここでも小説の構成には独特の創意が凝らされていて、ストレートな「読み」では全体像を把握し損なうかも知れない。しかも、本編には数点の絵画も添えられている。表紙にも採用されているブロンツィーノの「愛の寓意」は、まさしく小説のタイトルそのものだが、フラ=アンジェリコの「受胎告知」などは、小説の構成そのものとともに、解釈に戸惑いもする。妖艶でコケットリーなエロティシズムと、無垢だけが持ち得る明るい残酷さが共存する作品だ。2013/11/14
匠
152
リョサ作品はこれが初読み。予想以上に読みやすかった。描かれているのは再婚した夫婦と継子の官能的な三角関係だが、日常描写の合間に神話や絵画をモチーフにしたそれぞれのイメージが重なる話を織り込み、味わい深いものにしていた。愛する妻のためにリゴベルトがバスルームで1人行う毎晩の儀式が一番クスクス笑えたのだが、読み終えてしまうとそのシーンはなんともせつない。そして美しい息子、フォンチートはもう小悪魔どころじゃなくルシファーで。残酷で皮肉、いたたまれないのに面白く読んでしまった自分が怖くなった(苦笑)2014/07/28
新地学@児童書病発動中
130
美少年フォンチート、継母ルクレシア、夫リゴベルトの危うい関係を描いていく長編。微妙な均衡を保っていたこの三者の関係が崩れた時に悲劇が起こる。6つの絵が冒頭に収録されており、この絵に基づいた物語が挿入されるところに特長がある。エロチックな場面が多く、甘美で色彩豊かに描かれているのだが、現実感が希薄でどこか神話の世界のようでもある。フォンチートは人間というより、神話の世界からやってきた異教の神のようだ。「受胎告知」の絵とそれに基づいた物語が異質であり、夢から覚めることを表現しているのかもしれない。2016/04/23
青蓮
113
読友さんの感想より。非常に刺激的で匂い立つような官能に充ちた物語でした。あどけない美少年フォンチートと継母であるルクレシアの危険な関係、妻を女神のように崇拝する夫のリゴベルト。7枚の絵画をモチーフした物語が合間に挿入され、作品に不思議な奥行を生み出しています。フォンチートは美しい天使の姿をした悪魔。時折見せる少年らしいあどけなさも全ては計算の内かと思うと戦慄する。そして結末は思いもよらぬ方向へ。これは衝撃的でした。ミステリィっぽい雰囲気もあってとても楽しめました。装丁も含めて大満足な1冊。続編も読みたい。2017/07/27
小梅
102
ブックカバーを着せてても、電車の中で読むのは、後方の人の視線が気になって恥ずかしかったです。 天使の姿をした悪魔?いやいや凄かったです。2014/08/27