内容説明
『嵐が丘』の新訳という大仕事を終えた後、一旦は諦める覚悟をした子どもを授かった。妊娠・出産の現場で出逢う、いままで口にしたこともなかったことば、そして幼い娘の口からこぼれ出すひらめきに満ちたことば。言語を獲得する途上の豊かな子どもの世界によりそい、それを深い考察へと紡いでいく珠玉のエッセイ集。
目次
1(『嵐が丘』と結婚;「ヒンカイ」って何?;靴下問題 ほか)
2(かぶさんが来る;闇をまぎらす―イェーウトゥゴ;痛みを分かつ―クーヴァード ほか)
3(ふたつの孤独;アンドちゃん、あらわる。;考える指 ほか)
著者等紹介
鴻巣友季子[コウノスユキコ]
1963年東京生まれ。お茶の水女子大学大学院在学中より翻訳の仕事を始める。エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』の新訳、J・M・クッツェー『恥辱』『遅い男』など、翻訳書多数。その他、エッセイ、書評もてがける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kuukazoo
6
いろいろ忘れていたことを思い出したり遠ざけようとしていたことにまた向き合わされたりするようなことがいっぱいで、どうして今この本を読んでしまったのかそれは運命なのかと思わざるを得ないような、というわけで、混乱している。子どもと言葉を通して見える世界の豊かなこと。自分にとってもこどもを産み育てることは、開けてはならない蓋を開けてしまうようで恐くもあったけど、実際は世界の再構築みたいな感覚で、出会い直す楽しさや面白さが恐さを凌駕した感じだった。2016/05/31
mako
5
幼子が発する”へんてこな”言葉を真っ向から受け止めて、頭に浮かぶ世界の文化・文学と照合させてるエッセイ。面倒くさい子育てをもう一度やりたくなる。2025/02/11
メイロング
3
すごいの読まされたなー。娘の成長という軸が通っているので、一本の物語を読んだような満足感。育児エッセイではくくれない深い深い考察が読むのをやめさせてくれない。まさに「読み終わった後で世界が違って見える」本だね。生死に関する一節は、初めて虚数の考え方と出会ったときと同じ、手に取れない概念で城を築いていくようなワクワクがあふれる。2012/12/28
eri
3
日常の体験を通して(妊婦体験だったり、産まれてきたこどもの成長だったり)そこでひっかかったことから、考えを巡らして行く。ことばを扱う方だからこその視点や思考が大変面白かった。2012/12/16
ジジ
2
ことばへの感度。このくらいことばをかみしめて生きられたら、人生は深く味わいのあるものになるだろうなあ。2024/11/05