内容説明
お産が近づくと屏風を借りにくる村人たち、両腕のない仏さまと人形―奇習と宿業の中に生の暗闇を描いて世評高い表題作をはじめ名作七篇を収録する。谷崎潤一郎賞受賞作。
著者等紹介
深沢七郎[フカザワシチロウ]
大正3年(1914)、山梨県に生まれる。日川中学校を卒業。昭和31年、「楢山節考」で第一回中央公論新人賞を受賞。35年12月号「中央公論」に発表した「風流夢譚」により翌年2月、事件が起こり、以後、放浪生活に入った。40年、埼玉県にラブミー農場を、46年、東京下町に今川焼屋を、51年には団子屋を開業して話題となる。56年『みちのくの人形たち』により谷崎潤一郎賞を受賞。62年(1987)8月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
162
若いころこの本を読んで感動し、ファンレターを出したら「会いに来なよ」という返事がきたので、菖蒲町にあるラブミー農場を訪れた。私にとってこの人はあくまでも〝七郎さん〟なのでそうお呼びすると、特に違和感もなく応えて下さり、2、3時間も話した。「をんな曼荼羅」に出てくるフォートリエの絵を見せて頂くと、茶色の線を数本引いただけの単純な絵だった。小説にあるように、この絵は一時は鳥の糞塗れだったらしいが、それもある種の禊ぎのように思われた。「をんな曼荼羅」を読んだ後では、糞を刮ぎ落としたフォートリエは真に美しかった。2019/12/18
かるかん
62
『私は享楽のためにエルを飼ったのだ。なんという罪なことだったろう。人も、犬も生れなければ静かなのに、生れたから苦しむのだ。たのしいこともあるかもしれない。が、生れる前のほうが静かなのだ。』何かで知った、みちのくの人形たち。聞くより読んだほうがいいと思うので、読んでみてください。2016/04/03
ann
61
リアルで薦められて、珍しく素直に従って読んだら後悔した。だって深沢七郎。もっと早く読むべきだった。一見荒削りな言葉の並び。読むほどに深い味わいが。表題作も勿論いい。でもシビれたのは「秘儀」「アラビア狂想曲」。"平成の終わり"の作家にコレが書けるか?激しく"否"2018/06/21
あじ
48
土着人が大層不気味である。訛りが鼓膜を歪ませ、目眩で大地がひっくり返るようだ。隙をついて駆け出したい深沢の地。何十体と並ぶ人形たちの視線が、余所者の私を射す。重低音の読経が続く文章、土を噛み砕くように荒々しく。81年の谷崎潤一郎賞を受賞。小川洋子と平松洋子の共著「洋子さんの本棚」で、互いに取り上げていた作品。お産時に立て掛ける、一枚の屏風を借りに来る村人…「みちのくの人形たち」他、全7編収録。2015/03/13
メタボン
46
☆☆☆☆☆ 深沢七郎は土俗的な習慣、文化を、ぐっと引き寄せて小説に結晶化させる。ここに小説を読む醍醐味がある。両腕のない仏と子消しの習慣が人形に結びつく表題作、博多人形の裏返しにある意味おおらかな日本の性が感じられる「秘戯」、飄々としたコメディ「アラビア狂想曲」、北海道の原住民とのかみあわない会話と日本人の習慣が不思議なユーカラとして風変りなものに見え始める「和人のユーカラ」、猫足の畳職人清吉が起こすかまいたちとしての所業「『破れ草子』に拠るレポート」、フォートリエの絵が与える微妙な影響「をんな曼陀羅」。2017/09/12
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