内容説明
日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、ちっぽけながら独立独歩、任侠と人情を重んじる正統派のヤクザだ。そんな組を率いる阿岐本雄造は、度胸も人望も申し分のない頼れる組長だが、文化的事業に目のないところが困りもの。今回引き受けてきたのは、潰れかかった私立高校の運営だった。百戦錬磨のヤクザも嘆くほど荒廃した学園を、日村たちは建て直すことができるのか。大人気の「任侠」シリーズ第二弾。
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
作家。昭和30年、北海道三笠市生まれ。その執筆範囲は、警察小説、ハードボイルド、アクション、伝奇小説、SF小説など幅広い。平成十八年度吉川英治文学新人賞を『隠蔽捜査』で、平成二十年度山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を『果断 隠蔽捜査2』で受賞。空手の源流を追求する、「空手道今野塾」を主宰する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
こば本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
455
前作(任侠書房)ではなんだかビジネスに通じるところが多いのでは?、と思っていたので、今回はハナからビジネス書として本書を楽しみました。安岐本親分は部長、日村は課長、日村の舎弟達は日村配下のメンバー(一般社員)、学園は採算の上がらない万年赤字の子会社、という具合です。あとがきでは、企業再生小説、任侠小説、組織小説などとしても楽しめると言及されていましたので再読時はどの視点で読もうか楽しみです。2017/08/05
W-G
443
一作目に引き続き楽しめた。前作での、出版社や町工場の再建方法は、今風な経済ヤクザっぽいアプローチであったのに対して、今回はいかにも昔気質の渡世人。それが私立高校というモチーフと絶妙にマッチする。日村と阿岐本に活躍が偏って、若手組員、特に市村は、一作目より存在感が薄れてしまった印象を受けたが、そこはシリーズ物なので、この先、順々にフォーカスを浴びていけば問題ない。ただ、志村などはもう少し面白い使い方があったような気がする。地の文の随所で、ヤクザっぽい観察眼が発揮されていたり、細かいところもしっかりしている。2020/09/17
ひさか
372
2007年9月実業之日本社刊。2010年1月実業之日本社ノベルス化。2012年1月中公文庫刊。シリーズ2作目。私立高校の理事長、理事となって活躍する阿岐本組の面々が楽しい。任侠仕事ファンタジーだ。2019/05/01
absinthe
301
面白い。今野さんの中でも屈指じゃないだろうか。荒れた学校、やる気のない教師、学校を信頼しない学生たち。中まで腐りきっているかに見えたが、彼らが接してみると新たに見えてくる学生の素直な心、本当は愛情あふれた教師たち。昔気質の任侠たちが渇を入れ、教師も学生も少しずつ変わっていく。子供の顔色ばかり伺い、事なかれ主義を押し通してきた学校が、その歪みを少しずつ正していく。こんな事が本当にあればいいな。2020/12/09
佐々陽太朗(K.Tsubota)
297
とにかく楽しい。それだけでなく日本人が失ってしまった大切なものを思い出させてくれます。それは「恥の文化」です。人間として恥ずかしくない行い、そういう生き方ができないならば死んだ方がましだという感覚です。ヤクザの行動様式から学ぶなどといえば何をバカなと非難される時代です。しかし真っ当な市民を名乗る者の中にもとんでもない卑劣漢がいることも事実。ヤクザの方がよほどましだろうという輩です。自分が気に入らないことに文句をいっていれば済むと思っている輩、権利ばかり主張して自らは何も背負わない輩、恥を知りなさい。2015/11/18