内容説明
優秀なゴースト・ライターだった夫が、本当の「幽霊」になってしまった!困り果てる売れっ子作家に、夫の幽霊から電話が…(「ゴースト・ライター」)。中学時代の同級生から、十五年の歳月を越えて送られて来た手紙とは(「時効」)。ミステリーはいつも電話と手紙によって運ばれる。傑作推理短篇集。
著者等紹介
今邑彩[イマムラアヤ]
1955年(昭和30)、長野県生まれ。都留文科大学英文科卒。会社勤務を経て、フリーに。1989年(平成元)鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と十三の謎」に応募し“十三番目の椅子”を『卍の殺人』で受賞。以降、推理小説を中心にホラーなどを手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
259
今邑彩さんの12冊目の著作で全8編収録の短編集です。今回は英語の副題が付いておりまして前半がコール(電話)後半がレター(手紙)が小道具に使われています。本書は全体的に設定に強引さが感じられ著者がミステリーのトリックよりも人間ドラマ重視で書かれた様に思いますね。私のお気に入りは「情けは人の…」「ゴースト・ライター」「白いカーネーション」「時効」です。家族のドラマチックな悲劇には哀切ながら一抹の救いがあり読後の余韻が良好です。来生たかおさんの名曲「シルエットロマンス」の歌詞「恋心ぬすまれて」を思い出しました。2024/08/29
りゅう☆
133
兄の死の真相に『ひとひらの殺意』を感じ、悪意が絡む『盗まれて』た結末に最後に笑うのは…、母の『情けは人の…』の言葉で自らの未来を拓け、『ゴースト・ライター』のラストの一言に安堵を覚え、ホラーテイストの 『ポチが鳴く』理由は簡単に読め拍子抜け、『白いカーネーション』を受け取る母の愛を感じ、『茉莉花』という名で人生の裏表を見せられ、『時効』の呪縛は解けるのか。二転の展開は予想できるが更なる三転に驚愕したり、これで終わり?な感じもあり、後味悪かったり、思わずホロッときたり。ある意味予想できない結末に楽しめた。2016/05/13
chantal(シャンタール)
96
電話や手紙が重要な役割を果たすミステリー短編。携帯電話が主流となってしまった今では、もうこんなお話は成立しないだろう。電話や手紙だからこそのすれ違いは物語にするにはもってこいのシチュエーション。どの短編も色んな形で様々な物を「盗まれて」しまう。人の暗い部分を抉り出すのが上手い作家だ。どのお話もとても面白かった。『茉莉花』は以前、別の本で読んだ事があるお話だった。その時も思ったが、今回もやはり同じように思った。一人称で語ってるあなた!お前が言うな!ってね、嫌悪感。これ、多分女性はみな不快に思うことだろう。2021/08/03
hideko
96
作家さん買い。短編集。8編収録。 いずれも警察や探偵などは出てこない派手派手しさないが短編でこれ程まとめてあるのは流石である。手紙、電話などを効果的に使用されている。最後まで読み進めると各ストーリーのタイトルに納得。 しばらく今邑さんの作品は読まないでおこう。もう新作が出ることはないのだから。2017/12/16
セウテス
89
電話や手紙が、物語の鍵になっている8つの短編集。それぞれが独立した話で、それぞれのオチに今邑彩氏らしいヒネリを感じます。「ひとひらの殺意」は、長編にしていたなら本格ミステリになるトリックだと思います。「盗まれて」は二転三転の展開というより、悪い事を考える人には、又別に悪い事を考える人が集まるものと受け止めました。「ゴースト・ライター」はスッキリと終わると思いきやの、ラストの一行。しかし案外、笑えて 気分が良い。もしかしたら見逃されてしまう様な悪意や犯罪、ここに集点を当てる稀代の作家さんでした。2018/03/14