内容説明
人間、芸術、宗教、この三つが独立を保ったまま、同時に密接に絡まり合う不即不離の関係であることを、大乗仏教を根底に多様な角度から語ったエッセイ集。
目次
感想前篇(生を悦ぶ心;春の縁にて ほか)
論文(宗教と芸術;仏教と文学との照合―東京帝大青年会講演要項 ほか)
訳偈(春の偈頌を訳す)
一色一香集(表現は宗教である;月見草 ほか)
感想後篇(笑いの比較;一分の迷い ほか)
著者等紹介
岡本かの子[オカモトカノコ]
1889(明治22)年、東京生まれ。本名大貫カノ。跡見女学校卒。「明星」「スバル」で歌人として活躍。1910(明治43)年、漫画家岡本一平と結婚。翌年、太郎(画家)を産む。この頃「青鞜」に参加。仏教研究家としても著作活動を行う。1929(昭和4)年、渡仏。三年間の外遊後、1936(昭和11)年、『鶴は病みき』で実質的に文壇デビュー。1939(昭和14)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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メタボン
28
☆☆★ 難しい仏教用語が出てきて歯が立たない文章が多かった。滋味あふれる文章なのだろうが、今の私にはどうもそぐわなかった。耳の周辺に流れる水のイメージは、いつか読んだ岡本かの子の短篇を思わせる。一色一香集のみずみずしいイメージにあふれた短文は良かった。2021/06/15
リタ
17
ここ最近私が吸収してきたものが本の形で結実して、私の前に現れてくれた。そんな気がする随筆集です。花がすべて散ったとき、そこに生まれるのは“まごころ”。それはずっと昔から息づいている仏神の教えにとてもよく似ています。日々の生活を生活たらしめているのは、知らず知らず自身の身に宿している変わらないものの存在なのかもしれません。仏教研究家でもある作者ですが、その視点はむしろ宗教的なものを捨てている。ただそこにある美しさや、ただそこにある魂。彼女はそういうものに向かって、何も願わない手を合わせているのです、きっと。2015/03/18
ダイキ
6
「主婦が考へる献立は直に家族の者に影響し、家族の者の働きはまた社会に影響するのである。」2015/05/10
あ げ こ
6
作家として活躍するより以前、仏教研究家としての著作。信仰という強力な支えを得たことによって、迸る感性は研ぎ澄まされ、より鋭く、より繊細に、より豊潤なものと化す。物事の表裏、相反する両の面、そのどちらをも認め、優劣なく愛おしむ心が好ましい。いきいきと満たされた心より発せられる言葉は、信仰が与える幸福と喜びに照らされ、のびやかに舞い、眩い輝きを放つ。読む者を魅了する、作者特有の艶。ねっとりと光り、甘やかに香るそれは、本作においても、確かに感じ取ることが出来る。2014/01/28
野乃子
1
短編では作品というフィルターを通して触れていた岡本かの子のみずみずしい感性に、より近く直接触れることができる。 「感想(前後編)」はどういったものなのかしらと思いきや、本当に「感想」。 日頃おりにつけ用いる「感想」というものとは、何かについて自分が感じたことをありのまま述べることなのだと、改めて気付かされる。 その対象が草木や人の感情などの形無いものでも、純粋に全ての事象に「感想」は抱けるものなのだと。