内容説明
会話が成立しない。文章に書いてあることより、暗黙の了解のほうが優先する。そんな曖昧な日常に活を入れる、おそれを知らないエッセイ集、第五弾。「話がまったく通じません」「助詞ないのも腹立ちますねー」「おまえにだけは言われたくないと言われる」ほか。
目次
やってみたら百難千苦だったよ
こんなことにいち早く気がついたオレは偉い
集中しろ。にやにや笑うな
典型的なB君
随筆の練習
マンションで儲ける
話がまったく通じません
世界にただひとつの鮨
ネガティヴに考えます
ちょっと思ったこと〔ほか〕
著者等紹介
町田康[マチダコウ]
作家、ミュージシャン。1962年大阪生まれ。高校時代より町田町蔵の名で音楽活動を始める。97年に処女小説『くっすん大黒』で野間文芸新人賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2000年には「きれぎれ」で芥川賞を受賞する。01年詩集『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、02年「権現の踊り子」で川端康成文学賞、05年『告白』で谷崎潤一郎賞、08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Y2K☮
31
真面目な問題提起から入ったり最初から何かがずれていたり。五作目にもなると多様な型ができている。息継ぎの限界まで捲し立てる締めも含めて。随筆における嘘について考えると、先日の某日本人メジャー選手の松ヤニ騒動が頭に浮かんだ。ばれぬように使うなら黙認。だが彼らは共にあからさま過ぎる。スポーツの世界ではアウツと云わざるを得ないだろうし、昭和の文士が本書を読めば「きみ、これはアカンよ」と眉をひそめるだろう。でもこの体当たりな作風だからこそ太宰治の匂いを感じ取れるのだ。猫背の謙虚さに劣らぬ何が悪いという雑草の矜持を。2019/05/10
Ichiro Toda
7
町田康のエッセイ集の五巻目。たまたま5巻目を手に取っただけで、エッセイ集自体ははじめてだったがあまりにエッセイの概念から外れている文章がエッセイらしく並んでいることに驚愕し、エッセイ集のファンとなった。エッセイにもこんなに自由があり、小説さがあり、創造性があるということに気づかされる。また内容も小説の難解さとは打って変わって分かりやすく、遊び心に満ちているので読みやすい。町田康の初期作品で読むのを諦めてしまった方に是非お勧めしたい。町田康の小説の入門としてもじゅうぶんであろうエッセイ集。2013/11/26
tyfk
6
ギター侍、オレオレ詐欺、とかでてきたので2004年くらいか。すこし芸風が変わったのかな。たまたまシュタイナーの本とか併読していて思うのは、ちょっと通じるものがあるかも、日常での修行ぽいところとか。2024/09/13
gu
5
客観的であることをよほど徹底しないとここまで「私」を笑い者にできないよなあ。2014/03/10
くるまやさん
4
哀しみを深く宿らせた真剣な瞳で、現実の不条理や矛盾を暴き、それを一身に受けて。それでも読者であるわたしたちに優しい。好き2014/03/10