内容説明
作家・砂村悦子が殺された密室状態の部屋には、鏡の前で途絶える足跡の血痕が。遺された原稿には、「鏡」にまつわる作家自身の恐怖が自伝的小説として書かれていた。鏡のなかから見つめているのは、死んだはずの「アイ」―!?貴島刑事が鏡に消えた殺人者に挑む、傑作本格ミステリ。
著者等紹介
今邑彩[イマムラアヤ]
1955年(昭和30)、長野県生まれ。都留文科大学英文科卒。会社勤務を経て、フリーに。1989年(平成元)鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と十三の謎」に応募し“十三番目の椅子”を『卍の殺人』で受賞。以降、推理小説を中心にホラーなどを手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
351
今邑彩さんの第3作の本書は文句なしで著者の最高傑作だと私は思いますね。本当にここまでの作品はハズレもマンネリもなく全てが新鮮な秀作ばかりで野球で言えば十割打者だなと真剣に思いますよ。著者の得意技は謎めいたプロローグと種明かしのエピローグの定番スタイルで、本書の場合も1頁目は何が何だかさっぱり意味不明でしたが気にせずに読み進めると、まさに最終頁で漸く答が出て深く感嘆させられましたね。本書には前2作にはないホラー色が加味され、秀逸な欺瞞トリックが扱われた正真正銘の傑作ですので多くの方にぜひ読んで欲しいですね!2022/01/07
しんたろー
212
殺人現場は密室で、犯人の血だらけの足跡はまるで鏡の中に入ったかのように鏡の前で途切れていた…「怪奇と本格推理の融合」を狙った物語はゾクゾクする出だしからホラーテイストを漂わせつつ終盤の謎解きまで一気に読ませてくれた。これが処女作に近いものだからこそ、その後の今邑さんの活躍があったのかと納得させられる秀作。トリックは良く練られているし、どんでん返しも程好く効いていて、本格ミステリ好きには自信を持って勧められる。刑事・貴島の印象が薄めなのが唯一の弱点だが、彼のシリーズとして続編が2作あるようなので楽しみたい♬2020/10/06
麦ちゃんの下僕
190
密室状態の部屋で殺された新人女性作家…その現場には、血の足跡が等身大の鏡の前まで続いていた…まさか犯人は鏡の中へと消えたのか!?…刑事「貴島柊志」シリーズ第1弾。今邑さんは『金雀枝荘の殺人』『時鐘館の殺人』に続いて3冊めですが、解説の結城信孝さんも書かれている様に「本格ミステリの資質」「作品の雰囲気」「文章の読みやすさ」三拍子揃っている今邑作品は本当に面白いんですよね!シンプルなのに唸らされるトリック…ホラー✕ミステリーの見事な融合…警察モノ特有の“堅さ”もない魅力的なストーリー展開…文句無しの名作です!2022/05/11
hideko
140
うーむ、いつから積んでいたのだろう? 一人の女流作家が密室で殺された。 犯人の足跡は鏡の前で途切れている。まるで鏡の中へ入っていったかのような… ああ、そっちかあ〜見事に騙されたわ。 この貴島シリーズ、多分これ以降、購入してないと思うんで集めよう。 今邑さんがもう亡くなられているから余計にね。2017/08/06
ぽんすけ
107
最近ぼちぼち今邑先生の作品を読んでいるのだが、どれも今読んでも面白いのがすごい。今作は新進の女性ミステリー作家が密室で殺害されるというもの。犯人の足跡は鏡へと続き、遺された原稿には殺人を匂わせる自叙伝的小説が。犯人は昔死んだはずの「アイ」なのか?最初犯人は女で被害者と同程度の身長ということで真っ先に母親を考えたが、利害関係者で一番臭いのは旦那かな?離婚を巡るトラブルで殺して現場を偽装したかと思い直してしまった。すっかりミスリードされてしまったな。わかってみればなるほどなと思わせるタネと原因だった2025/05/31