内容説明
美というのは、いろいろの世界で、本当の自分、あるべき自分、深い深い世界にかくれている自分に、めぐり逢うこと―芸術を通じて現代という時代の運命を予言する試み。豊かさと軟らかさをそなえた、強靱な芸術論。
目次
第1部 美学とは(美とは何であるか;芸術とは何であるか;芸術のすがた;生きていることと芸術;描くということ;映画の時間;映画の空間)
第2部 美学の歴史(古い芸術観と新しい芸術観;知、情、意の三分説の歴史;感情のもつ役割;時間論の中に解体された感情;射影としての意識;芸術的存在;機械時代にのぞんで)
著者等紹介
中井正一[ナカイマサカズ]
1900年、大阪市生まれ。25年、京都帝国大学文学部哲学科卒業。30年、『美・批評』を創刊。34年、京都帝国大学文学部講師、48年、国立国会図書館副館長に就任。1952年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゴールドまであと935日
94
美学、私にとって、かなり以前、ちょっと小難しい本を読み始めた頃から、なにか恐れ多い、哲学の中の、もっと精緻な、そして取り組み難い、最後に向かうべき最高峰のような気がしていた。それをなんとなく、解きほぐしてくれた本である。なにが美か美学なのか、まだまだはっきりわかった訳ではない。なにか暗闇の中に、一筋の光を見いだせた、それを教え諭してくれた本である。図書館本だけど、購入して読み返したい本である。この著者、別の著作を探して、読んでみたいと思う。いい本だった。2024/11/18
いろは
25
たまに話題に出てくる『美学』。人間における思想の芯なのか、自分なりの考え方なのか、それとも?と、『美学』という言葉は口には出すけれども、『美学』の言葉の意味を知らない。『美学』とはどういうことか。そんな思いでたどり着いたのがこの作品。『入門』という程優しくはないけれど、『美学』の根底を深く見つめられている作品だとは思う。「美学とは」、「美学の歴史」と二部構成で述べられていて、美から、芸術から、映画から、さらには哲学から、『美学』を掘り下げていく。『美学』について、答えが出る作品ではなかったのが少し残念だ。2018/09/09
冬見
18
前半は「美」とは何であるか、どこにどのようにして存在しているのかを、後半は時代による芸術のあり方を歴史・哲学史と絡めて解説。前半は冒頭の「美学とは何であるか」がおもしろかった。後半は西洋哲学の知識がいくらか無いときついかもしれない。「感情のもつ役割り」「時間論の中に解体された感情」あたりは読みやすくておもしろい。やや主観が強い気がしないでもないけど、読み物としておもしろいと思う。2017/01/23
mass34
10
あんまり面白く感じなかった。多分、現実の方が面白いからだ。2016/09/13
浪
9
僕は安部公房という作家が好きです。その人はよくシュルレアリスムの技法を用いて小説を書くのですが、なぜそのような技法を用いるのか今まで理解できていませんでした。しかしこの本のジェリコの馬の話で納得できました。ジェリコは競走馬が走っている姿を全て足を伸びきって描き、切迫した瞬間を見事に表現していたのですが、実際は足を伸びきって走る馬はほとんどいないらしいのです。つまり、現実における真実を描くには、現実を超えた表現が必要になる場合があるということです。安部公房は小説で現実を浮き彫りにしようと試みていたのですね。2018/04/21