内容説明
戦後のにおいが色濃く残る時代から平成に至るまでの三十数年間、抽象論に陥ることなく、徹頭徹尾、作家と作品のみをエネルギッシュに論じ続けた評論集。内外の古典、同時代の作品、そして自作について縦横無尽に語り、文学の魅力と問題点を伝える。
目次
アンダスン「冒険」についてのノート
長谷川四郎氏の『遠近法』をめぐって
自戒の弁
きだみのる氏の文章生理学
なにもわからぬ
悪態八百の詩人
“洞窟”にたたずむ人
眼を洗う海の風
熱烈な外道美学
完全燃焼の文体〔ほか〕
著者等紹介
開高健[カイコウタケシ]
1930年(昭和5年)、大阪市天王寺に生まれる。大阪市立大学在学中よりさまざまな職業を経験、卒業後は寿屋(現、サントリー)の雑誌『洋酒天国』を編集した。57年、「パニック」「巨人と玩具」「裸の王様」を発表、翌年、第三十八回芥川賞受賞。人間の原点と社会の組織に目を向け、現代社会と取り組むエネルギッシュな作家的姿勢を一貫して保つ。1989年(平成元年)没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しーふぉ
19
サルトルの嘔吐が開高健にとって特別な一冊なのがよく分かった。難解な気もするけど、読んでみよう。2017/04/23
原玉幸子
11
1955年から1990年頃迄の、作家へのインタビュー、小説の評論、自身の創作等に関わるエッセイは、寝る前の「つまみ食い読み」が丁度良かったです。昭和の時代反映に何を今更と思うところもありますが、彼の文体と言うか、使う言葉や言い回しには本当に感心するところが多く、本書を切っ掛けに、今迄遠巻きに見て手を出さなかったサルトル『嘔吐』を借り、著者「闇三部作」の滅多にしない再読したい気分になり、そして、著者が繰り返し嘆いていた文学の低落を研究してみようと思う、いい意味での啓発本でした。(◎2021年・春)2021/05/07
つちのこ
5
どこから読んでも良さそうなので、けっこう時間をかけて、のらりくらりと読み切った。山本周五郎の『青べか物語』では“女を描くのがうまい”という観点から、するどい論評。さすがにこんな読み方はできない、としばし唖然。もう一つは、小田実の話。これが面白い。私がもっていた小田氏のイメージがあっという間に崩れてしまった。2010/08/25
Haruka Fukuhara
3
だと思ったけど、文学論といった仰々しいものではなく、短い文章の詰め合わせだった。100くらいの小文を読み通せば確かに彼の文学論が見えてくるかもしれない、といったところ。谷沢永一の解説を読んでから何個か小文を読んでみて、やっぱり面白い人だと思った。適当に書名だけで選んでも思ったのと違うことが多いから代表作と言われるものから読んだ方がいいかもしれないと思った。2017/03/14
空蝉
2
とぼけた振りをして軽妙辛辣。そして、読書を読書だけで終わらせない行動力。私は、ここまで読んだ本の内容を自己投影してきただろうか。読みたい本を読み散らかしてきただけだ。情けない。2010/10/03