内容説明
美味を訪ねて東奔西走、和漢洋の食を通して博識が舌上に転がすは香気充庖の文明批評。津々浦々の名店をめぐり、食べてはせっせと歩き、歩いてはせっせと食べた漫遊紀行。ところどころ文壇交遊録や、珍味佳肴をめぐる詞華集の趣きを呈したり…。夷齋學人・石川淳の序で幕開き、巻末では著者が、かつての担当編集者と共に往年の健啖ぶりを回想する。
目次
神戸の街で和漢洋食
長崎になほ存す幕末の味
信濃にはソバとサクラと
ヨコハマ朝がゆホテルの洋食
岡山に西国一の鮨やあり
岐阜では鮎はオカズである
八十翁の京料理
伊賀と伊勢とは牛肉の国
利根の川風ウナギの匂ひ
九谷づくしで加賀料理〔ほか〕
著者等紹介
丸谷才一[マルヤサイイチ]
大正14年(1925)、山形県鶴岡市生れ。東京大学文学部英文科卒業。小説、評論、翻訳、エッセイと幅広い文筆活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
69
広東料理店で「日本料理の原型は広東料理のほかならない」と言ってみたり、日本料理屋で甘鯛を食べて「あま人や鯛つるらしも」という京極為兼の歌を思い出してみたりする食物エッセイ。芥川比呂志と鰻を食べたり、石川淳とお座敷で飲んだりという文壇交遊録も楽しいですが、金沢の加賀料理屋で器の青九谷に「心が惹かれて、底がみたくなつた。しかし、汁がはいつてゐ」るので汁を飲むことにしたら「味加減がすばらしい」という、風雅と食い意地の絶妙な塩梅が本書の肝で、作者一流の流麗な文章で綴られる「珍味佳肴をめぐる詞華集」を楽しみました。2023/06/22
夜間飛行
47
土地や店にまつわる話から入り、前菜程度の嫌味のない蘊蓄を垂れ、料理の外見を目で味わったのち食事に取りかかる。食べている時の味や歯応えや細かな描写は、自分が食べているような気になる。食後のお茶目な感想がまたいい…例えば麤皮のステーキを食って「仔牛が草を食べて肥り、大きくなるのはいいことであるし、神戸に麤皮というビフテキ屋があるのはいいことであるし、その店にポルトガルの葡萄酒があるのはいいことである」と、(旨い物を食べた感想は誰でもこんなものだが)放心して見せる。料理を想像しながら、文章に魅せられてしまった。2014/03/16
minimu
24
お気に入りさんに教えていただき、Kindleのセールで落としました(^^) タイトルの通り旧かな使いのためノスタルジックである一方、ずいぶん多様なものを食べていらっしゃることから割と最近?と思い調べてみたら70年代。村上春樹のデビューとほぼ同時期に、こんなレトロなエッセイがあったとは。どうやら読者の食指を動かそうという魂胆はなさそうで、昨今の飯テロでもたれ気味だった私にはこの距離感がかえって良かったです。何しろ早起きまでして粥を食べに行ったのに、感想は「熱い」だけですからね笑。2016/04/05
マッキー
18
読むメシテロ。表現が丁寧で生々しい。空腹時に読むといてもたってもいられなくなりますね。2017/07/28
gelatin
17
★★★(★) 40年以上前の食通エッセイ。昨今のグルメ本の原点(丸谷氏はこの言葉がお嫌いだそう)。「うまい」というために知的な作業があることがとても贅沢で楽しい。何か食べて万葉集を思い出したりしませんもの。最近の飯本って「ほっこり」だの「のんびり」だの「癒し」だの感情的なオプションが多いのがわかる。高価な器を惜しみなく使うことに「うまい」の一端を担わせるあたり、さすが文化人です。それにしても脂っこいものお好きですね、丸谷先生。ニクヅキに旨いと書いて「脂」ですもんね。2015/05/12
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