出版社内容情報
インカ社会からフジモリに至る政治経済まで。異文化の交錯が生み出した個性的な社会とラテンアメリカ一万年の歴史を壮大なスケールで照らし出す。
内容説明
インカの神話的社会がスペイン人と遭遇し、交錯する文化と血が、独立と自由を激しく求めて現代へと至る。蠱惑の大陸、ラテンアメリカ一万年の歴史が織りなす極彩色の世界。
目次
最初の遭遇
インカ、百年の王国
征服されたインディオ
成熟する植民地社会
インカを探して
カリブの海賊
シモン・ボリーバルとスペイン領アメリカの独立
ロサスとフアレス
ブラジル帝国
メキシコ革命
ヴァルガスとペロン
著者等紹介
高橋均[タカハシヒトシ]
1954年、東京都に生まれる。78年、東京大学教養学部国際関係論分科卒業。東京大学教養学部助手、立正大学経済学部助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。ラテンアメリカ史・地域文化研究を専攻
網野徹哉[アミノテツヤ]
1960年、東京都に生まれる。84年、東京大学文学部西洋史学科卒業。東京大学教養学部助手、フェリス女学院大学文学部国際文化学科専任講師を経て、東京大学大学院総合文化研究科准教授。アンデス社会史・ラテンアメリカ史を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
43
【始原へ17】ラテンアメリカは距離的にだけでなく私にとって最も遠い国だった。国名すらよくわからない。しかしこの本で少し近づけた感じがする。もしかしたら最も苦難の道を歩み、それ故に最も可能性を秘めた地域ではないかと。ただれそれは発展の可能性ではない。西欧近代と野生の相剋の末での"何か"への可能性だ。始原という観点でいえば、16世紀まで他の世界から全く隔離されたまま独自に歩み、征服後も北米のようにインディオが排除されなかった故に複雑な途をたどってきたという点にある。■本書は個性の異なる2人の共著だ。↓2021/06/06
MUNEKAZ
14
ラテンアメリカの歴史を手軽に知るにはすごく良い一冊。古代史はインカ帝国を深掘りし、逆に近現代史は独立から現代までの苦闘を各国並列で語る。「マヤとかアステカとかに触れんでもいいのかい」とも思うが、宗主国と植民地の狭間で生きる人々のアイデンティティに寄り添った記述で、実に読ませる内容。近現代のパートも普通だったらごちゃごちゃしそうな政治史中心の歴史が、著者の突き放した良い意味で冷笑的な視点から図式的に描かれるので、なんともあっさり風味で読みやすい。左派と独裁で揺れ動く、混沌とした中南米諸国の見取り図になる。2024/06/04
KAZOO
14
中南米の歴史をここまで詳しく解説してくれる歴史書で文庫版はあまりないと思いました。興味がない人にはかなり読み通すには忍耐がいると感じますが、ヨーロッパ以外でかなり昔にしっかりとした文明が栄えていたということにはかなり面白く読ませえくれました。2014/01/13
coolflat
13
50頁。定住植民地とは、英領北米植民地やオーストラリアなどを指す。その特徴は先住民を植民者のいとなみに参加させる事なく、フロンティアの彼方に追いやってしまう事である。植民者はそのかわり、自ら手を労して土地を耕すなど直接生産に従事する。従ってフロンティアの内側の植民地社会は比較的階級差の小さい単一民族社会となる。他方で行政植民地とは英領インド、蘭領インド、仏領インドシナなどを指す。宗主国民は植民地社会の中で少数エリートの地位にあり、行政的・管理的な仕事だけに従事して、手を労して働く仕事は先住民にやらせる。 2017/03/20
tieckP(ティークP)
5
とにかく文章が上手い。中公には「物語○○の歴史」というシリーズがあるが、あちらに物語になっていないものが交ざっている一方、この本は非常に物語的。事実と物語が混淆し、のちに文学でもマジックリアリズムで世界を湧かせた地域らしい一冊だろうか。前半の網野氏の部分はインカ帝国がスペインの支配下でどう変化していくかを丹念に追った、非常に誠実なドキュメントで、後半の高橋氏はその後のラテンアメリカ全体を豪腕と豊富な語彙でともかく従えてみせた、著者が主役の案内図。欠点はインカに比べアステカが足りないのが寂しいことくらい。2017/06/14