出版社内容情報
疫病は世界の文明の興亡にどのような影響を与えてきたのか。紀元前五〇〇年から紀元一二〇〇年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。
内容説明
アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は、歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきた。紀元前五〇〇年から紀元一二〇〇年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあてて世界の歴史を描き出した名著。
目次
第1章 狩猟者としての人類
第2章 歴史時代へ
第3章 ユーラシア大陸における疾病常生地としての各文明圏の間の交流―紀元前五〇〇年から紀元一二〇〇年まで
著者等紹介
マクニール,ウィリアム・H.[マクニール,ウィリアムH.][McNeill,William H.]
1917年カナダ・ヴァンクーヴァ生まれ。シカゴ大学で歴史学を学び、1947年コーネル大学で博士号取得、同年以来、長い間シカゴ大学で歴史学を教えた。現在では引退し、コネティカット州のコールブルック在住。シカゴ大学名誉教授
佐々木昭夫[ササキアキオ]
1933年、東京生まれ。東京大学文学部、同大学院(比較文学・比較文化)に学ぶ。東北大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ykmmr (^_^)
103
図書館の予約都合の為、読みが上←下の順番になってしまった。上巻は主に古代の話。ペストとキリスト教の関係。感染症にも宗教的な考えが分かれるのは、昔も今も変わりない。それプラス、マクロ寄生・ミクロ寄生の感染症と政治も関係し、各国の海の行き来が様々な物を良くも悪くも運ぶのは言うまでもない。まあ、今昔、感染症の広がり方は全然変わっていない。しかし、また今昔変わらない原因的要素により、人間が振り回されているのもまた同じ。医学的対応だけではなく、それぞれの価値観を破らないと、感染症に打ち勝つのは難しいのかもしれない。2021/12/03
どんぐり
77
かつて人類にとっての大災厄は、疫病だった。ある文明社会に特有の病気が、その病原菌に曝された経験をもたない文明社会に向けて放たれたとき、それは強力な生物学兵器にもなった。その典型的な例が、スペイン人がインカ帝国にもたらした天然痘だ。「近代細菌学の開祖」といわれるコッホが登場する19世紀までは、このような肉眼では見ることのできないミクロな寄生生物を理解できる者はいず、それをコントロールする術をもたなかった。この本は、宿主としての人類と感染症との長い歴史を論じている。上巻は、狩猟者としての人類、歴史時代へ、ユー2016/08/23
skunk_c
75
面白い。証拠の少ない大昔から、疫病という「ミクロ寄生」がどのように人間社会に影響を与えたかということを、様々な史料から類推していくが、人口の問題のほか、いろいろな歴史的側面を疫病との観点で考察する著者の見方が鋭い。なるほど、そう考えるんだと思うことしばしば。疾病に対しては安易に病名に頼らず、不明な部分はきちんとそのように扱う姿勢もあり、ある種のミステリーを読むようなスリルもあった。『戦争の世界史』とはまたひと味違う読み応えで、下巻も楽しみ。ひとつの切り口からマクロな歴史を紡ぎ出す筆者に脱帽だ。2023/08/28
翔亀
48
【コロナ2】治療薬もワクチンもない伝染病。それはかつての疫病と同じではないか。疫病史を復習してみようと読み始めたら、驚いた。疫病こそが(戦争にも増して)世界史を動かしてきた一大要因だったのだ。動かしたってもんではない。疫病史は世界史そのもの。文明化した人類の自業自縛。人類の誕生から古代までを扱った上巻を読むだけでも震撼の連続である。■天然痘、おたふく風邪、はしかといった古来からあった微生物(細菌やウィルス)病原体は、地域限定で人間と微生物が相互に長い時間かけて適応するからアウトブレイクなしに↓2020/04/19
たかしくん。
38
奇しくもこの時期に読むことになりました。先に読んだ下巻と同様、今のパンデミックが決して偶然のものではないことも、改めて認識。人類が、地球上の数々の大型狩猟獣を駆逐し、食物連鎖自体を大きく変えてしまった一方で、見過ごしてしまった細菌・ウィルスらに、苦しめられる有史以降の経緯。著者は、この疫病をミクロ寄生し、大型獣よりはるかに脅威を奮った戦争をマクロ寄生と定義づける。そして、人類の文明化に伴う都市社会の形成が、疫病を後押しする。古代宗教の勃興を始め、人類は有史以降、常に疫病と共存せざるを得ないことに。。2020/05/05