出版社内容情報
近代西欧科学は一七世紀突如生まれたものではない。本書はラテン世界とアラビア世界に渡り四~一四世紀の忘れられた1千年から近代科学の素性を解明する。
内容説明
近代西欧科学は一七世紀に突如生まれたものではなく、さまざまな面でそれ以前の中世に深く根を下ろしていた。本書では、ラテン世界とアラビア世界に亘り四~一四世紀の忘れられた千年の中世科学の空隙を解明する。科学史の碩学が史実を巨視・微視的に捉え、多くの重要文献からアプローチした名著。図版多数収録。
目次
西欧科学の源流としての中世―その意義と研究状況
ギリシア科学の遺産
中世ラテン科学の発端1―キリスト教教父の自然観
中世ラテン科学の発端2―プラトニズムの伝統と編纂家の科学
ビザンツの科学
アラビア科学の発祥
アラビア科学の開花1―数学・天文学・物理学
アラビア科学の開花2―錬金術と医学
十二世紀ルネサンス
西欧ラテン科学の興隆―ヨルダヌスとグロステスト
西欧ラテン科学の発展―ガリレオの先駆者たち
中世科学と「科学革命」―その連続と断絶
著者等紹介
伊東俊太郎[イトウシュンタロウ]
1930年、東京生まれ。1953年、東京大学文学部哲学科卒業。1964年、Ph.D.(科学史・ウィスコンシン大学)。1978年、東京大学教養学部教授。現在、東京大学名誉教授・国際日本文化研究センター名誉教授・麗澤大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
有沢翔治@文芸同人誌配布中
9
ルネサンスと言えば、ギリシャ文化の見直しです。実際、ダンテ、シェイクスピア、ペトラルカはギリシャ・ローマ文化から多大な影響を受けています。これはギリシャ人が宗教的な迫害を受けて、シリア、エジプト、イラクに渡ったからです。しかしルネサンス以前から断続的に影響を受けてきたと指摘しています。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51488088.html2017/06/18
富士さん
4
近代科学がなぜ今のような形になったのか、なってしまったのかを見事に解き明かす超名著でした。まず、科学というのは信仰であり、哲学であるということ。だからローマのような純技術文明は全く評価されたない。当然異教であるインドや中国も。そして科学は近代に至って、それまでの人間的な部分を切り離し、直接自然を描き出すことができるという教義に達したということ。これによって現実を説明し、技術を導いて科学は未曾有の宣教に成功し、人類を覆う巨大宗教となった。そしてそれは、自然を描く手は気まぐれにブレると気づく20世紀まで続く。2017/12/28
Theopotamos
1
筆者は近代科学を中世の研究の延長にあると論じながらも、中世の科学と近代の科学の決定的な差異を強調することで近代科学及び近代の特徴を描き出している。また、近代科学の成立には西洋だけでなくイスラム世界、シリア、インド、キリスト教の異端派などの多様な視点、国際的な潮流が流れ込んでいることを指摘している。近年のヨーロッパ中世の再検討の流れの一環とも言えると思う。個人的にはギリシャ科学の伝承にシリアやキリスト教異端派の果たした役割がおもしろかった。2017/02/26
ponkts
1
イスラム教世界に近代科学が成立せず、キリスト教西欧世界に近代科学が成立した理由として、個人的には循環史的歴史観から直線的歴史観へと移行する際の「神」の役割が大きかったのではないかと思っている。循環史として世界を捉えると、キリストの死と復活が無限に繰り返されることとなり、神への冒涜となるからである。それにしても科学史を意識して国家間比較をすると、いかにイスラム教の思想が多様性を認めていたかが分かって面白い。あと大学や教父の役割も非常に大きい。コペルニクスとヴェサリウスは同じパドヴァ大学医学部の出身だった。2017/01/28
まむし
1
文系向けな理系の本。歴史辿るからわかりやすい2014/08/10