出版社内容情報
おいしい食物が眼の前にならんだ幸福と食卓の愉しさを満喫させる、全国津々浦々にわたる美味求心の旅。独自の文体に香りが漂う。<解説>金井美恵子
内容説明
金沢の蟹、明石の鯛、京都の筍、下関の雲丹、長崎の唐墨…。おいしい食物が眼の前にならんだ幸福と食卓の愉しさを満喫させる決定版食物誌。全国津々浦々にわたる美味求真の旅は、時に“西洋”を舌先で味わいあるいは酒飲みの心理にいたる…。食物の美や立食式にもこだわりをみせた、独自の文体に香りが漂う不朽の名著。
目次
長浜の鴨
神戸のパンとバタ
飛島の貝
近江の鮒鮨
瀬戸内海のままかり
広島の牡蛎
新潟の筋子
金沢の蟹
関西のうどん
東京の握り鮨〔ほか〕
著者等紹介
吉田健一[ヨシダケンイチ]
1912(明治45)年、東京に生まれる。吉田茂元首相の長男。暁星中学を卒業ののち、英国ケンブリッジ大学に学ぶ。ヴァレリー、ロレンス等、英仏にわたる翻訳、文芸批評、小説など多彩な文筆活動をした。『シェイクスピア』『瓦礫の中』で読売文学賞、『日本について』で新潮社文学賞、『ヨオロッパの世紀末』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三月★うさぎ
4
吉田健一のこのだらだらした結論もなくどこに向かうのかも分からないような文章がたまらなく良い。思いつくままに書き散らす代わりに、他人の評価や資料には全く頓着せず、自分の舌や感覚や思想のみで勝負する潔さが好きだ。今、私たちは簡単に美味しいものの情報を手に入れることができる。それをこの人は全部自分の舌のみで探し出してきているのだ。金持ちの道楽息子というのも世の中には必要なのね。ただ続けて読むと文章が頭から流れ出るので、旨い酒のようにチビチビ楽しむのがいい。糞な解説は破り捨てていい。2010/11/23
Seagull
2
全国津々浦々の「名物」をテーマにしながらも、その土地と味との繋がりを考察された文章。「長浜の鴨」「神戸のパンとバタ」「関西のうどん」「明石の鯛」「富山の鱒鮨」・・・etc.料理に酒が加わって、そこに著者の物語が絡まっていくという上質のエッセイです。「氷見の干しうどん」の簡潔明解さ、「瀬戸内海のめばる」の味の表現。今でいうところのグルメ・エッセイなのでしょうが、さすがに吉田健一。表現が深いのです。 2013/12/19
やまべ
2
初・吉田健一。面白かった。この独特の文体は実は外国語翻訳にだいぶ影響されているのではないかと感じた。「酒の味その他」が秀逸。再読したい。2013/01/08
bunca
2
彼ならではの、食に対する思い入れが伝わってくる。特に酒の飲み方は共感する点が多かったです。2009/11/25
bunca
1
久しぶりに飲兵衛の食日記を読んで、お酒が恋しくなりました。 「~日本酒を飲むのがいやになる時というのがあるだろうか」のくだりは名言。2015/07/14