出版社内容情報
精神的双子ともいえる運命の女性、スーと駆け落ちをしたジュードであったが、悲惨で異常な事件にまきこまれてしまう。人間存在の悲劇性を示す問題作、完結編。
内容説明
精神的双子ともいえる運命の女性、スーと駆け落ちをしたジュード。結婚と性生活の破綻を体験し、いま新たな婚姻にためらいをかくせない二人であったが、悲惨で異常な事件にまきこまれてしまう。人間存在の悲劇性を示す問題作、完結編。全二巻。
著者等紹介
ハーディ,トマス[ハーディ,トマス][Hardy,Thomas]
1840年、イギリスのドーチェスター近郊に石工の息子として生まれた。建築家として修業するかたわら、小説執筆に手を染め、1871年最初の作品『窮余の策』を出版。以来、故郷ウェセックスを舞台に人間存在の悲劇性を主題とする数多くの作品を書いた。代表作は『はるか狂乱の群れを離れて』『キャスターブリッジの市長』『ダーバヴィル家のテス』『日陰者ジュード』など。発表された当時、「テス」と「ジュード」の二作品は既成道徳に真っ向から逆らうものとして激しく非難され、ハーディは以後小説の筆を折り、詩作に専念した。1928年没
川本静子[カワモトシズコ]
1933年生まれ。津田塾大学英文科卒業。東京大学大学院修士課程修了(英語英文学専攻)。ハーヴァード大学大学院留学。津田塾大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
111
強い意思で運命に抗わなければならないのだろうか。ジュードの不幸は自ら引き寄せたものであり、所謂悲劇とは思えない。彼女一筋でいたわけでもなく、結局は、ジュードのだらしなさがまわりをも巻き込んでいる。有名な『テス』は読んでいないが、ハーデイ協会があるほどの作家というのがピンとこない2016/02/05
扉のこちら側
76
初読。2016年16冊め。【108-2/G1000】事実婚を選んだ二人だが、やがてその関係は破たんしていく。煮え切らないジュードと、混乱していくスーに、子どもたちの衝撃的な死に翻弄されてしまった。上巻ではさほど思わなかったのだが、確かにこの下巻の展開では、発表当初の酷評は免れなかっただろう。しかし21世紀の今読む本としては単純に面白い。【第8回G1000チャレンジ】2016/01/10
みっぴー
48
優柔不断が罪ではないけれど、一度学問に身を捧げようと決意したのなら、あの手この手で誘惑は断ち切るべきだったと思います。彼に冷酷だった大学の門も、叩き続ければ開いたかもしれません。夢を追い続けていればジュードに振り回されて不幸になる人間の数は、七、八人減ったのに。運命の人、スーに出会った後の崩壊ぶりは更にも増して凄まじく、奈落の底なんて表現は生温い。読んでいるこっちまで神経症になりそうです。当時発禁だったのも下巻にきて納得。割り切ってシュール系コメディとして読むのが得策かと。2016/03/13
星落秋風五丈原
34
【ガーディアン必読1000冊】「あなたは、夢を見る人ヨセフなのよ。悲劇的なドン・キホーテなのよ。時には、石を投げつけられる間にも、天国の開くのを見ることができた聖ステパノでもあるわ。」のっけからスーに褒められているジュード。「あなたが好きですわよ!だけど、考えてみなかったんです、結婚っていうのが…好きだという以上のことだとは。男と女が懇ろな仲で暮らすのは、二人のどちらかが私のような気持を抱いているなら、どんな事情であれ、いくら合法的でも、姦淫ですわ」あくまでもリチャードの妻であることをやめないスー。2023/07/25
Miyoshi Hirotaka
22
主人公のJudeとSueの合成音はJudas(ユダ)の暗喩。レディー・ガガの曲でも物議を醸すこの主題は、19 世紀には酷評の的。伝統社会では、職業や結婚等人生の大事は権威により決まった。その不条理への挑戦が主題。人の死を転換点にしたのは、シェイクスピア以来の英文学の伝統だが、21世紀基準でも衝撃的なシーンが登場する。さて、死期を悟ったJudeがSueに会いに雨の中を歩く場面が、ビートルズの『Hey Jude』の題材になったと思われる。そうすると歌詞の意味や曲中のパーカッションが全く別の意味に聞こえてくる。2021/04/13
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