内容説明
光子という妖しい美の奴隷となった柿内夫妻は、互いにまんじ巴のように絡みあいながら破滅につきすすむ。官能的な愛の中に心理的マゾヒズムを描いた傑作。晩年の谷崎と、若尾文子・岸田今日子による座談会(昭和三十九年収録)を付す。
著者等紹介
谷崎潤一郎[タニザキジュンイチロウ]
明治19年(1886)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝大国文科に入学するも、のち中退。明治43年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和40年7月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和24年には、第八回文化勲章を受けた。昭和39年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
64
去年のいまごろ、『細雪』の3冊本を読んでいた。それ以来の谷崎文学である。同じ関西を舞台にしており、西宮の高級住宅地香櫨園に住む柿内夫人園子と船場の羅紗問屋徳光のお嬢さん光子との同性愛に、綿貫という光子の恋人を登場させての三角関係、さらには夫を巻き込んでの愛憎や奸計をめぐらす内紛劇へと発展し、人間同士の絡み合う姿や女の業の深さを描き込んだ大阪言葉による語りの物語だ。改行の少ない語りがだらだらと続くので、読み難さは否めない。この中公文庫版の巻末には、光子役と園子役で共演した女優の若尾文子、岸田今日子と谷崎の鼎2017/09/17
そのじつ
12
読み終えると共にゾっ、ゾワ〜!!ときた。私はてっきり恋愛小説だと思って読み始めたのだけど、途中からなんだか様子がおかしくなってきたと思ったら・・・これは心理的ミステリであり、ホラーでもあったのか!?こっ、こわっ!!2015/07/26
qwer0987
8
関西弁の流麗な語りが美しい。しかし流れるような文章のわりにそこで描かれる人間たちは実に身勝手。けどそれゆえ起こるごたごたをにやにやしながら読めた。光子は一筋縄でいかない人で周囲を振り回すし、園子も光子が好きすぎて嫉妬したり地味に周りに迷惑をかけるし、綿貫も紳士然と見えながらこすっからい男だったりする。どいつもこいつも困った人たちだがリアルで存在感があって良い。言うなればこの入り組んだ四角関係は人間というものの滑稽さそのものとも言える。そんな可笑しな悲喜劇が面白く、心に残る作品であった。2022/11/24
カイロ
4
同性愛と異性愛が絡まりあって、尚且つ嫉妬、ツンデレ、メンヘラ、精神的加虐等の要素が加わっていて「卍」の複雑さをゆうに越えていた。日本には男色や男娼等は古くから存在していたので、男性の同性愛は珍しくも何ともない話だけれど、女性の同性愛はどうだったのだろう。大正期の女性の同性愛を取り上げた論文は見たことがあるが、当時の一般の認知はどのようなものだったのか気になった。2014/05/20
IKUNO
1
女性の同性愛小説だと思って読んでいてはすぐ飽きてしまうだろう。 虚実織り交ぜて提示される進行は、だれがだれを騙しているのか、それともだれかが全ての糸を引いているのか、読者を混沌の渦に突き落とすだろう。 そして訪れる不気味な結末。 当事者の独白だけで表現される妖しい世界は、まさに天才谷崎潤一郎の面目躍如といったところだ。2019/03/15
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