出版社内容情報
息づまるような緊迫の連続のうちに維新の大事業が生彩あふれる人間群像によって着々と進行する。明治政府ここに成り、近代日本の夜明けを迎える。〈解説〉松尾正人
内容説明
宮廷の政変にとどめるか、武力変革にふみきるか。息づまるような緊迫のうちに幕をあけ、民衆・官僚・士族三つ巴の葛藤に国際関係がからみあい、西南戦争で古い対立が終わるまでの壮大な維新史を解明し、西郷や大久保など、変革期の多彩な人物群像を鮮やかに描く。
目次
王政復古
慶喜政権のまき返し
鳥羽・伏見の決戦
江戸開城と民衆の動向
内乱の終結
古代復帰の幻想
廃藩置県
新しい権力のしくみ
地租改正・秩禄処分・殖産興業
文明開化
国権外交
征韓論
明治六年十月の政変
うちつづく内乱外征
西南戦争
著者等紹介
井上清[イノウエキヨシ]
1913年(大正2)、高知県に生まれる。36年(昭和11)、東京帝国大学文学部国史学科卒業。41年まで文部省維新史料編纂事務局、46年まで帝国学士院帝室制度史編纂会の嘱託として史料の整理・編纂にあたる。50年より日本学術会議会員。54年、京都大学人文科学研究所助教授、61年、教授となり、77年、同大学名誉教授。日中の学術交流に力を注ぎ、97年(平成9)、中国社会科学院名誉博士、98年、日本人初の北京大学名誉教授となる。2001年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
104
岩波新書などでおなじみの井上清先生による明治維新の分析で、かなり硬すぎる部分があるのと独特の史観をお持ちなのですが、やはり一番の人選なのでしょう。教科書的に読むのには一番向いていると思いますが、この時代は多くの小説家が様々な人物を題材にして書かれているものもあるのでそちらの先入観に左右されるケースがあります。私などもその例で司馬さんの史観に頭がいっぱいになっています。ただ客観的に分析するならばこの本が最適なのでしょう。山本七平さんに書いてもらいたかった気もします。2015/10/20
訪問者
6
これまで言葉だけで知っていた征韓論や西南戦争の実態について、多くの史実からやっとその概略を掴めた気がする。全26巻と先は長いが、せめてこれくらいは一通り読んで置かないと、歴史認識も持ちようがないだろう。2023/01/30
あしお
6
王政復古の大号令から西南戦争まで。 政治を志す人ならきっと誰もが憧れる時代だろう。古い制度を変えて新しい世界を作る。日本に夢があった時代だと思う。しかし、現実は当然そんなに甘くはないから、夢のある時代に取り残される人もいる。その疎外感って、他の時代よりも辛いことではないかな。 西郷さんって英雄なんだろうけど、この巻を読んでいると、ただの戦争好きな感じもする^_^;。大久保利通はどうもいけすかないのだが、やはりこの人がいたから明治維新は進んだのだとも思う。2020/10/24
takashi1982
5
井上清(1913〜2001)は文部省維新史料編纂事務局嘱託などを勤め、京大名誉教授でもあった。その井上が研究者として最も脂の乗っていた頃、通史として書いた明治維新史である。幕末から西南戦争までを対象とする。半世紀近く前の本ゆえに、今では地方史や民衆史の更なる研究によって指摘される複合的な視点はあまりない。しかし政治史としてみた場合、一次資料に依拠しながら、これほどまで当時の志士(若かりし頃の元勲)たちが生き生きと描写された歴史書も珍しい。恐らく、今の学者ではこれだけの見通しとスケールでは書ききれないだろう2012/10/09
うどん97丁目
5
★★★☆☆:事実は小説よりどうたらら。熱い時代だ。それぞれの立場があって、それぞれ守りたいものがあって。時代に翻弄される人も多かったろうに。権力うまく使いこなすって大変なのね。今の自分の立場でもあっちをたたせりゃこっちがたたなかったりと、時折そんな事を思った。もうすぐ死んだばあちゃんがうまれる。明治に入り少しだけ身近な時代になるにつれ刹那さが増すようです。もう一度再読して理解を深めたい。ベランダから外をみると夫婦やカップル、帰りを急ぐ一人の人や酔っぱらいが沢山います。2012/09/26