内容説明
二十一世紀は二十世紀の続きなのか?政界における多数派シンドローム、企業の膨張至上主義、崩壊する安全神話、続発する警察の不祥事…。日本の行き詰まった状況をウィットとユーモアあふれる語り口で浮き彫りにする痛快エッセイ。
目次
世紀末在庫整理(二〇〇〇年問題;コンクリートの寿命;第四の権力、あるいは二十一世紀最強の武器 ほか)
真夜中の太陽(第三の徴税人;空中の商魂;省力化の帳尻 ほか)
見えすいたトリック(離散家族と日本の責任;幼児に英語を学ばせる愚;器さえ良ければ ほか)
著者等紹介
米原万里[ヨネハラマリ]
1950年、東京都に生まれる。59~64年、チェコスロバキアで過ごし、在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。帰国後、東京外国語大学ロシア語科卒業、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語通訳、翻訳者となる。80年、仲間とともにロシア語通訳協会を設立、初代事務局長に就任。現在、同会長。92年、テレビの同時通訳によって報道の速報性に貢献したとして日本女性放送者懇談会賞を受賞した。95年、通訳を論じた『不実な美女か貞淑な醜女か』で読売文学賞、97年、『魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる一三章』で講談社エッセイ賞、2002年、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』で大宅壮一ノンフィクション賞。03年、『オリガ・モリソヴナの反語法』でBunkamuraドゥマゴ賞を受賞
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
200
2000年前後に、婦人誌に連載されていたエッセイをまとめたもの。編年体ではなく、中央公論の編集者の配列になるものだろう。ここに収められたエッセイは、ごく一部を除いて、いつもの米原万里さんのタッチとは大いに違っている。すなわち、正攻法で語る社会評論家としての彼女のもう一つの顔だ。したがって、お得意のアネクドートも影を潜めている。語られていることは極めて正しく、ごもっともである。日本社会の構造を正しく捉えてもいるだろう。書かれた当時のではなく、本質的な意味においてだ。でも、私たちはいつもの米原万里さんがいい。2015/02/23
優希
73
20世紀から21世紀にかけて語られていました。多くの小話のような題材に驚かされます、米原さんが当時心配していた日常の行き詰まったことが的中しているというのが怖いですね。2019/05/17
メタボン
36
☆☆☆☆ 何気ない日常や外国の小咄から始まったエッセイがいつの間にか舌鋒鋭い批評へと様変わり。米原さんの批評眼が良く、何かすっきりとした心持になる。また批評の背景に確固としたヒューマニズムがあるのが良い。2018/12/12
おさむ
31
故・米原万里さんの20世紀末から21世紀にかけての時事エッセイ集。ロシア人には沢山の小話の引き出しがあるというが、通訳の米原さんも同じ。よくもまあこれだけのエピソードや笑い話を持っているものです。その本質は解説を書いてる佐高信氏も兜を脱ぐほどの「辛口」なのですが、視座は一般の弱者に立脚しています。「歴史のない国」アメリカが覇権を握った20世紀、朝鮮半島分断の原因をつくった日本、など冷徹な国際社会批評も健在です。ブックオフの108円本の掘り出し物でした。2018/09/02
mm
21
2000年頃にミセスとか婦人公論とかその他色々に掲載されていたものをまとめたもの。ある特定の方向から見たら、きっちりと形が整っているように見えても、ひっくり返せばぐっちゃぐちゃということは珍しくはありません。それがオムライスの失敗作くらいなら笑って済ますことができますが、国の制度や歴史観の場合どうなるのでしょう?米原さんは整って見える一面と、こちらも見なさいという両面の切り取り方と見せ方がうまい。ごまかされることのない眼力の切れ味はは20年くらいの年月では錆びないもんだな。今なら何を示してくれたのか。。。2020/03/04