内容説明
若くしてマルクス主義者、入獄、ニーチェによって転向し、ドストエフスキイによって小説家として自立した戦後文学の第一人者の、キリスト者として死すまでの精神の軌跡が、みずから「つまずきの記録」というこの「聖書物語」の中に、やさしい微笑、含羞のユーモアとともに語られる―。自伝的な、体験を通して書かれた心あたたまる聖書入門。
目次
私の聖書物語(処女受胎;愛と律法;まぼろしの門;人間に原罪はあるか;海の上を歩くキリスト ほか)
イエスの誕生
クリスチャンであること
モラルについて
著者等紹介
椎名麟三[シイナリンゾウ]
1911(明治44)年、兵庫県に生まれ、姫路中学を中退、大阪に出て、見習いコックなどの職を転々とした後、28(昭和3)年、宇治川電気鉄道に入社した。日本共産党の細胞として活動中に、31(昭和6)年の一斉検挙で逮捕され、33(昭和8)年出獄してからは文学、実存哲学に傾倒し、小説を書きはじめる。47(昭和22)年、「深夜の酒宴」を『展望』に発表して、戦後文学の代表作家となる。やがてキリスト教に入信、独自の文学を形成した。73(昭和48)年3月28日没
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感想・レビュー
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Viola
4
荒れた生活の後、共産主義に傾倒し投獄も経験、出所後に聖書に出会いキリスト者になる椎名麟三の信仰告白ともいうべき随筆。聖書の奇跡物語を信じることができず、イエスの十字架に人間の死を見て絶望し、それでも信仰を得て喜びを持っている著者が、迷いと葛藤の中でもがきながら自分なりに落とし前をつけて神を信じている素直さに共感する。ユーモアを交え、信じることと信じないこと、イエスが人間であることと神であることの二重性を受け入れるしかない開き直りに人間臭さを感じ、満たされた救いを見事に文章化している。2016/04/25
belier
2
マルクス主義者から転向した後、小説家になりキリスト者となった著者の新約聖書に関するエッセイ。57年に刊行された本の文庫版。白か黒か断裁することを嫌う、いわゆる古い日本人的な心情を持つ人のキリスト教信仰における悩みを見せてくれていると思う。現代から見ると古くさい観点が多いが、さすがに人間観察に鋭い部分もある。「いつもクヨクヨなやんでいる」という著者と同じ傾向のある者として、共感するところもあった。2023/10/20
hisajun
0
☆4 2013/03/12
メズゾース
0
復活がその勝利なのだ。その彼は、私たちとたたかいながら、少くとも私にこう告げているのだ。「生きてくれ!生きてくれ!もっと十分に生きてくれ!お前はそのように生きることができるようにされているんだからだ。貧乏くさい生き方ではなく今日一日の苦労が、今日一日で十分であるようなほんとうの生き方ができるようにされているんだから。」125頁。2019/03/09
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