内容説明
父文帝を弑して即位した隋の第二代皇帝煬帝。中国史上最も悪名高い帝王の矛盾にみちた生涯を検証しつつ、混迷の南北朝を統一し、東洋史において重要な意義を持つ隋時代を詳察した名著。隋国号を考証する「隋代史雑考」併録。
目次
隋の煬帝(南北朝という時代;武川鎮軍閥の発展;隋の文帝の登場;文帝の家庭;江南の平定 ほか)
隋代史雑考(隋国号考;隋文帝被弑説;大業十四年;隋恭帝兄弟考)
著者等紹介
宮崎市定[ミヤザキイチサダ]
1901‐1995。長野県飯山市に生まれる。1925年、京都大学文学部東洋史学科卒業。60年から65年にかけ、パリ、ハーバード、ハンブルク、ボフムの各大学に客員教授として招かれる。専攻は中国の社会・経済・制度史。89年、文化功労者に顕彰される。もと京都大学名誉教授
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感想・レビュー
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isfahan
13
宮崎先生は本当、文章上手すぎ!慰遅迥VS韋孝寛、鄴城の戦いとか白熱の描写で本当に胸が躍りました!解説書なのに並み居る歴史小説を押しのける尾面白さ。伝統中国の史観では隋までを北朝にいれる(北史など)など、今だからこそ逆に新鮮な指摘も。隋までを南北朝に押し込むこと自体が、多分にに唐朝が自らの美化のために作った史観であることは間違いないし、中国の統一において隋の文帝の諸改革が魏晋南朝的なものに一つの引導を渡したことは確か。しかし、それでは果たして隋と唐の間に差異はなかったのか、改めて見ていくのもいい。2014/06/05
モリータ
11
『中国史』上下巻が岩波文庫に入ったそうで(先週の週刊文春の「文庫本を狙え」に書いてあった)、それに飛びつく前にとりあえず積読のものを消化していこう。しかし「そしておそらく、次男の世民の献議によったものであろうが、部下の軍隊に突厥式の騎馬戦術をそのまま真似て訓練しだしたものである。」のような「ものだ(である)」の使い方はおもしろいですね。2015/07/14
shimashimaon
10
遣唐使の物語を読んでいて、この時代に興味が湧いています。遣唐使の前に遣隋使があり、隋と唐をセットとして記憶していましたが、全く違うらしい。中国では、南北朝時代を経て再び中国を統一した隋は、時代区分上はむしろ南北朝に含まれると考えられているようです。著者は、北方異民族鮮卑族の影響、武川鎮軍閥という共通点だけでなく、相違点も強調しています。唐の太宗、李世民は新しい型の人物で、唐は新しい性格の王朝だと言います。煬帝は暴虐な君主として有名ですが、資治通鑑のような生々しさは少なく、小説のようで読みやすいと思います。2021/10/28
isao_key
8
魏晋南北朝の後に楊堅(文帝)が興した隋の歴史を描いた史書。人物に肉薄した筆致は小説を読むよりもおもしろい。これだけ古い時代の記録を生き生きと描写できる学者は、現代ではもういないだろう。文帝5人の男子のうち、天子となった次男煬帝を除き、長男廃太子楊勇は煬帝に殺され、三男秦王楊俊は妻に毒殺される。四男蜀王楊秀は文帝の怒りにふれて庶人に落とされ、五男漢王楊諒も煬帝に幽閉されてしまう。母独孤伽羅が望んだ兄弟仲良くとの思いとは逆に、すさまじい権力闘争が行われた。煬の意味は、色を好んで礼を無視したものなどにつける諡。2014/08/13
nizi
7
宮崎市定なので文章は物語作家ばりに読みやすい。あの馬鹿でかい国土を一時とはいえ収めていたのだから、煬帝がある種の傑物なのは間違いないと思うのだが、読む限りは「史上最大の小物」のように感じる。それもまた著者の思惑通りなのだろう。2025/01/15