内容説明
谷崎潤一郎の晩年を「孫・たをり」の視点から捉えた貴重な証言。老いた文豪の複雑な私生活を内側からあますことなく描き、『瘋癲老人日記』へと至る作家の旺盛な創作熱、想像力の原点に迫る。
目次
第1章 谷崎潤一郎の書簡と私(潤一郎と渡辺千万子のこと;北白川仕伏町の家;孫の持つ意味)
第2章 晩年の日常生活(食べ物のこと;芝居・歌舞伎・本・映画;後の雪後庵のこと)
第3章 書簡とそれにつながる作品(雪後庵夜話;台所太平記;瘋癲老人日記)
附 谷崎潤一郎から渡辺千万子への手紙(昭和三十二年~三十八年)
著者等紹介
渡辺たをり[ワタナベタオリ]
1953年、京都生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。日本大学芸術学部大学院修士課程修了
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井戸端アンジェリか
17
5年も前に読了していた事にビックリ。全然内容を覚えていなかった事にもビックリ。なので初読のように楽しめた。孫から見たおじいちゃんと言うより、母千萬子を通して想い出す祖父谷崎潤一郎の気がする。もっとね、こう、ほのぼのしたじいちゃんと孫のあれやこれやが知りたいのよね。一滴の血の繋がりもないのに溺愛するのは、産んだ母親の事が大好きだからでしょ。本当に溺愛されているのは母の方、恐るべし千萬子さん。2018/05/19
桜もち 太郎
5
作者は血縁上では谷﨑潤一郎の血のつながりがない孫にあたる。母親は渡辺千萬子で「瘋癲老人日記」の颯子のモデルだ。先日、潤一郎と千萬子さんの往復書簡が余すところなく掲載されている本を読んだが、孫たをりさんのこの本は、この往復書簡に頼るところが多く、ご本人もあまり鮮明な記憶がないようだ。といっても潤一郎の孫である。潤一郎の書斎にはたをりさんと猫のペルしか遠慮なく入ることはできなかったようだ。京都渡辺家の2階にも潤一郎の書斎があり、そこでかなりの作品も仕上げている。→2015/01/22
Noelle
3
面白かった〜。あの大谷崎の孫という 一見特殊な立ち位置の人の文章というより、解説にあるように「たまたま」身近にいた孫として お母様の手元に残っていた祖父の手紙と作品をリンクさせ、ご自身の思い出と照らし合わせて紡いだ文章という感じだった。真底 創作家であったらしい谷崎の姿が生き生きと目に浮かぶ。と同時にこんなにも孫を愛していた祖父の姿も微笑ましく。ますます 谷崎作品 読み進めたく思う。2015/06/21
井戸端アンジェリか
3
孫と言っても直接の血縁関係はない。とても可愛がられている様子が少しの写真と手紙から伝わってくる。でも、全ては若く美しく勝気で賢い母千萬子の産んだ子だから可愛いんじゃないだろうか。自分の子を中絶させる一方で責任のない孫を溺愛する真意に、文豪と称される由縁を見たような気がする。 千萬子への手紙が恋文のようでちょっと可愛くとても興味深かった。往復書簡があるらしいのでぜひ読んでみたい。2013/08/09
アト
2
たをりさんだからこそ分かる、谷崎はこう考えていたのではないか?というけっこう思い切った指摘にこちらがドギマギしてしまった。谷崎の食事時のエピソードや食べ物への強いこだわりを初めて知ったが、この点に関してはかなり面倒くさい人だ。千萬子さんと谷崎の書簡が多く引用され、手紙のここはどういう意味なのか等たをりさんが直接母(千萬子)に聞いて書かれた箇所も多く、既読の書簡集だけでも凄かったのに、たをりさんの目を通してこんな多角的にその時代を見れる驚きと、なんて贅沢なものに触れているのだろうという感動が込み上げた。2017/02/21