内容説明
二十世紀初頭に繰り広げられた南極点到達競争において、初到達の夢破れ、極寒の大地でほぼ全員が死亡した英国のスコット隊。その悲劇的な探検行の真実を、数少ない生存者である元隊員が綴った凄絶な記録。
目次
南極探検の歴史
第一の夏
冬の行進
第二の夏
第三の夏
極地への歩み
帰還行程
遭難の批判
著者等紹介
チェリー・ガラード,アプスレイ[チェリーガラード,アプスレイ][Cherry‐Garrard,Apsley]
1886‐1959。オックスフォードに生まれる。24歳でスコットを隊長とするイギリス南極探検隊に参加し、動物学者としてウイルソンの助手をつとめる。このとき「世界最悪の旅」を経験したが、南極行進では第1帰還隊に編入、生還した。ロンドンにて没
加納一郎[カノウイチロウ]
1898‐1977。大阪生まれ。北海道帝国大学農学部卒。大阪朝日新聞、農林省林業試験所などに勤務。戦後の南極観測事業では派遣計画委員として事業促進に尽力する。極地探検研究家としての著作・翻訳活動多数。日本山岳会名誉会員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はたっぴ
91
角幡さんの『極夜行』でお勧めされていた作品に挑戦。極夜での4ヶ月間においても死を覚悟するような場面があったが、こちらではより硬質な文章で、アムンゼンとスコットによる〝南極点到達競争〟の壮絶な記録が記されている。ここでは著名な探検家が何人も出てきて、それぞれの華麗な経歴を知ることが出来る。探検(冒険)ものが好きで何冊も読んでいるが、自分が全くしようとも思わない探検の記録をなぜこうも読みたくなるのだろう。普通に生活している限り関わることのない世界で、未知なる場所を求める人々のロマンに思いを馳せながら読了。2018/03/18
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
81
南極探検といって真っ先に思い浮かぶのがスコットとアムンゼンの南極点到達競争。先に到達し無事帰還したアムンゼンよりも、敗れたスコットの方が有名なのはその悲劇的な最後もあるが、彼の本当の目的が極点到達ではなく、南極大陸の科学的な調査にあり、後世に多くの成果を残したからだろう。彼の探検隊に参加し無事帰還した若き隊員が記した本。多少文章が読みづらい点があるが、-50度を下回る極寒を自ら経験した人間ではなければ綴れない世界である。「探検とは知的情熱の肉体的表現である」その言葉に相応しい探検であったと思う。★★★★2017/05/25
りんご
42
【20世紀当初、南極は地球上に残された最後の「未知の大陸」であった。】1911年、南極点に初到達を目指すイギリスのスコット隊の、悲劇的な旅の終わり。私、事前情報も基礎知識も何もなく、ふわっとこの本を読み出してしまった。100年以上前の探検家達の試行錯誤。踏破への意気込みとか意義とかはほぼ書かれてなくて、旅の記録と総括。おかげで(未来人の私が過去の人たちの行動を理解しようとしてます)っていう立ち位置を味わえました。関連ブックガイドに紹介されてる本がそそりますね。「北壁の死闘」はいずれ読もう。2025/03/22
100
39
地球上にまだ未踏の地が多くあった時代の極地探検の記録。翻訳文特有の言い回しと説明的内容から序盤は読み進めるのに苦労したが、後半にかけて強く引き込まれた。極限の状態での振る舞い、究極の選択、失敗と成功の対比は多くの学びを与えてくれると共に、人生のポリシーを問いかける。また、著者による総括と石川直樹さんの解説も素晴らしく、居ながらにして様々な情報を得られる現代で行動し実体験する重要性を教えられる。2020/07/05
piro
36
南極点初到達をアムンゼン隊と競ったスコット隊。極点に到達しながらも一番乗りの栄誉には恵まれず、帰路の荒天の中到達隊全員が死亡すると言う悲劇を綴った一冊。共に南極に渡り、極点行の際には輸送隊の一員として関わった著者が記した文章は、古い翻訳の為読みづらいものの、想像を絶する過酷さが伝ってくるものでした。当然ながら無線や衛星電話で救援を求める術はなく自分達だけが頼り。何故そこまでの危険を冒して過酷な旅に身を投ずるのか?終章に記された「探検とは知的情熱の肉体的表現である。」と言う一文がその一つの答だと思いました。2021/07/20