内容説明
「この地上で、私は買い出しほど、好きな仕事はない」という著者は、文壇随一の名コック。日本はおろか、世界中の市場を買いあさり、材料を生かした豪快な料理九十二種を紹介する“美味求真”の快著。
目次
春から夏へ(カツオのたたき;具入り肉チマキ ほか)
夏から秋へ(柿の葉ずし;インロウ漬け ほか)
秋から冬へ(鶏の白蒸し(白切鶏)
オクラのおろし和え ほか)
冬から春へ(タイ茶漬;アンコウ鍋 ほか)
著者等紹介
檀一雄[ダンカズオ]
1912年山梨県生まれ。幼年期を九州柳川で過ごす。東京大学経済学部卒。在学中の1933年、小説「此家の性格」を同人雑誌「新人」に発表。太宰治、坂口安吾らともに文学活動を始める。1937年、処女作品集『花筐』を出版。1944年に報道班員として中国戦線へ。同年、『天明』で野間文芸賞受賞。1950年『リツ子、その愛』『リツ子、その死』を出版。同年、『長恨歌』『真説石川五右衛門』で直木賞を受賞。1976年には『火宅の人』で読売文学賞受賞。同年、死去
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感想・レビュー
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佐々陽太朗(K.Tsubota)
120
自分で食材を市場へ買い出しに行く。東坡肉(トンポーロ)つくりで一日を棒に振る。文壇随一の名コック・檀一雄氏はそんな人だ。所謂食通やグルメというのとは少し違う。食べることが好きでうまいものを家庭で作る。もちろん料理店で食べることもあるだろうが、檀氏の姿勢は自分で食材を選び、手に入れて自分で調理するという家庭料理人だ。結局のところ、それが一番うまいのだ。私も下手ながら厨房男子のはしくれ。そのあたりの感覚は共通している。垂涎の料理が92種。これはまねてみるほかあるまい。2018/11/23
めしいらず
68
文壇きっての料理名人、檀一雄流料理指南書。極意はイイカゲン。イイカゲンは「投げやり」じゃなくて「好い加減」。レシピや分量と首っ引き、あの食材が売っていない、この調味料が揃わないなどと、始める前から投げ出すんじゃなくて、兎にも角にもやってみよう。そうすると自分なりに工夫しようと五感が研ぎ澄まされる。分量はあくまで自分が基準。積み重ねた失敗や経験は知恵となり、自分の流儀が次第に出来上がってくる。本を読んで知識ばかりを増やし、いつでも作れるような気でいたり、頭でっかちになったりしないように。自戒として。2014/11/09
Kajitt22
53
『火宅の人』檀一雄の料理本。小学生の頃、母の出奔により幼い妹たちにために料理をせざるを得なくなったと、最初に言い訳をしている。季節ごとの一品分4〜5ページの料理レシピの文章は潔く、大胆かつ本格的で本当に美味しそう。「男子厨房に入らず」の時代に、市場に買い出しに行く楽しさや料理の勘所を堂々と書いて屈託がない。一時住んでいたポルトガルやスペインの料理も登場し楽しい一冊。再読 2019/10/23
mike
52
9歳の時に母が家出をし、家事を任された檀一雄の料理本。今から50年も前の物だが中国、朝鮮、ロシア、スペインと彼が放浪した地での、季節感溢れる素材を使った料理の数々や、玄人はだし😲分量等大雑把だし、あるものは使い、無いものは無くて済ませればいいというスタイル。面白いのは1つ1つのレシピが短編のようにユーモアを混じえた独特の口調で語られている事だ。写真があったらと思ったが「そこは、君、自分で好きなように作りたまえ」と言われそうだ。2022/06/29
リコリス
46
いやぁ〜これは最後まで読んでもまたパッと開いたページから何度でも読んでしまうなんとも素敵な本である。「醤油やみりん、酒などの割合はどうだって好みのままでよい。こんがりとあぶりあげるのだ。」ようは美味しければいいし、美味しくなかったら美味しくなるようになんか足せばよい。文体も心地よく料理のレパートリーの多さに驚かされ、どれも実に美味しそうで作者が楽しんでいるのがよい。ヨーグルトを菌から作るのもすごい!とにかくお腹が空くから夜中に読むのはやめたほうがよろしい(笑)2016/08/23