内容説明
昭和二十年八月九日、ソ連参戦の夜、満州新京の観象台官舎―。夫と引き裂かれた妻と愛児三人の、言語に絶する脱出行がここから始まった。敗戦下の悲運に耐えて生き抜いた一人の女性の、苦難と愛情の厳粛な記録。
目次
第1部 涙の丘(駅までの四キロ;別離;無蓋貨車 ほか)
第2部 教会のある町(丘の下へ;墓場から来た男;歯型のついたお芋 ほか)
第3部 魔王の声(親書の秘密;赤土の泥の中をもがく;凍死の前 ほか)
著者等紹介
藤原てい[フジワラテイ]
1918年、長野県生まれ。県立諏訪高女卒業。1939年、のちに作家となる故・新田次郎氏と結婚。43年に新京(現在の長春)の観象台に赴任する夫とともに満州に渡る。敗戦後の45年、新京から愛児を連れた決死の引き揚げを敢行、辛うじて帰国に成功する。その体験を記した『流れる星は生きている』は、敗戦下の苦難の脱出行を活写したすぐれた記録として、戦後空前の大ベストセラーとなった
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
breguet4194q
186
著者が幼い子供三人と共に命からがら大陸から引き揚げてくるまでのノンフィクションです。壮絶過ぎる経験をした人、家族が戦後溢れかえっていた事がよくわかりました。そして何よりも、母の愛情ほど、この世に強いものはないと感じました。人間のエゴが渦巻く極限状態では、その人の「生命力」、「どんな状況でも生き抜いてみせる」という思いが、すべて。著者も、生きている意味さえわからなくなる中で、子供と祖国に戻ることだけを目標に生きていました。この事実と体験は、日本人が知るべき一冊だと思います。2020/08/29
ken_sakura
156
とても良かった。絶句した。敗戦後約一年掛りで満州から子供三人と日本に引き揚げたお母さん(著者)の記録。著者曰く遺書のつもりもあったとのこと。美化しない様に、過剰にならない様に、苦心している内省的な雰囲気がとても良かった。貧すれば鈍すを地で行く人の醜さと、それに抵抗する人の良心のようなものが出たり入ったりする著者の心情と著者の周りの人の振舞いが良かった。占領先で配って余る程食糧を持ってくる、そんなアメリカの姿勢を尊敬する。雨女はユーモアだった(^。^)著者は新田次郎の奥さん。2017/10/13
Miyoshi Hirotaka
152
ソ連参戦直後の満州で夫と生き別れた母の子連れ脱出行。敵地での敗戦国民の極限状況が生々しい。東北大震災で賞賛された行動とは真逆の同胞による無慈悲な淘汰。流星は摩擦で消えるが、そのエネルギーは変換されて別な形で存在する。愛する人も祖国も見えないが心の中に存在する。自分の死は逃げ場ではなく、目の前の子らの死と同じ。そこから湧き上がる生へのエネルギーが凄まじい。夫(新田次郎)や子(数学者となった藤原正彦)の運命を変えた一族の記念碑的作品。少林寺拳法の開祖宗道臣も同じ体験をした。少林寺拳法関係者には必読の一冊。2014/10/03
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
135
新田次郎氏の妻、藤原ていさんの満洲からの引き揚げの記録。1945年8月9日、ソ連の侵攻により満洲を離れ日本へ。乳飲み児を含む三人の子供を連れて日本へと向かう。「早く逃れなければ命はない」そんな思いで必死に逃れてきた一年あまりの記録。正直言って文章は拙く作家のそれではない。極限状態で生きることにエゴ剥き出しの人々。彼女が経験した日々をありのままに綴っている。過酷な状況の中、命を落とす事もなく皆無事で故郷に帰る事ができたのは奇跡的な事だったと思う。改めて母は強しを感じた。★★★★2021/08/01
オリックスバファローズ
134
この作品は藤原ていさんが三人の幼子をつれて満州から日本に引き揚げてきた時の体験を綴った小説で、戦後ベストセラーになったものである。 この本を読むことによって、教科書で習う戦争の歴史のもっと奥にあるものが見えてくるのではないだろうか。兵隊だけでなく、戦争とは関係のない市民が、どれ程に傷つくのか。その現実を如実にあらわした記録であると思う。また、親という存在がどういうものかを考えさせられる本でもあった。2018/06/14
-
- 和書
- 完全版 殻都市の夢