内容説明
レーニン賞など数々の栄誉に輝く世界的作曲家が、死後国外での発表を条件に、スターリン政治に翻弄された芸術家たちのしたたかな抵抗と過酷な状況を語る。晩年に音楽学者ヴォルコフが聞き書きして編んだ、真摯な回想録。
目次
1 真実の音楽を求めて
2 わが人生と芸術の学校
3 ロシア革命の光と影
4 非難と呪詛と恐怖のなかで
5 わたしの交響曲は墓碑である
6 張りめぐらされた蜘蛛の巣
7 ロシア音楽の伝統を受け継いで
8 過去と未来の狭間
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やっさん
120
★★★☆ 〝偽書前提〟であることを引き換えても、興味深い挿話が数多い。ただ、とるに足らないソヴェトの偉人の退屈な逸話も、その何十倍とある。概ね斜め読みしたが、ショスタコーヴィチの人間としての魅力を再確認。2017/02/26
ジョンノレン
49
10月に11番を聴くほか、ここに来て接する機会が増えて来たショスタコ理解を深めたく彼の生証言本を偽書疑惑はともかくピックアップ。11番は1905年の血の日曜日がテーマと思われているが繰り返される歴史、支配者への信頼を失った民衆を描いた由。ムラヴィンスキーとは双方向で必ずしも好意的とは言いがたい逸話も。トスカニーニの演奏にも強い苦言。彼にとって交響曲は墓碑で対象はヒットラーのみならずスターリンも含むファシズムの犠牲者。七番はまずスターリンが破壊しヒットラーが最後の一撃を与えたレニングラード想定は間違いない。2025/09/23
まゆ
4
ショスタコーヴィチとの面談に基づき証言を筆者が書いた本。ショスタコーヴィチが1975年に死んだあと秘密裏にアメリカに原稿を持ち出して出版された。筆者の偽造という説もあるが、出版直後に都合の悪い部分を隠そうとソ連体制側が流したということらしい。あの時代に亡命せず体制側からの圧力下で正気を保ちながら名曲を作り続けたのは奇跡的。体制に迎合したという声もあるが曲は「全てのファシズム的なものへの抵抗」であり「芸術は歪んだ精神からは生まれない」と真っ直ぐに音楽に対峙している。交響曲5番、7番の終楽章は強制された歓喜。2018/09/29
H2A
4
信憑性に疑惑有りのショスタコーヴィチの証言。しかし非常に面白い。マリア・ユージナ、メイエルホリドなど有名な芸術家たちとの交流や、独裁者スターリンら権力への屈従と葛藤も生々しく描かれる。ロマン・ロランらヒューマニストには否定的な言辞を浴びせる。この段の著者の言葉に共感。『証言』にもし本人のものでないものも含んでいたとしても、この異常な時代を生きた者がその中で喘いでいた絶望的な空気をまざまざと感じさる。自分の人生がほんとうに暗かったという最後の言葉も迫真に迫る。すべてが無価値などとはとても言えまい。
桜貝
3
学校の授業関係で読みました。旧ソ連の状況や彼の心情がよく書かれていて、その頃彼が関わった作曲家や芸術家についての記述も多くあり(ショスタコービッチの視点で)参考になりました。
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- 和書
- 沖縄記者物語1970




