内容説明
うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる…。猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
185
初読みの作家さんですが本作だけでは正直判断し難いかなと。本作においては面白い、面白くないという定義であてはめてはいけない作風なんだろうなと感じました。ただひたすらに数人の若者男女の至って平凡かつ普通な日常を淡々と書き綴るある意味、異色な作品です。感動するとかココロに響くとかがここまでない作品も非常に珍しいです。しかし、不思議と作者さんの他の作品も読んでみたいという気になります。会話の流れや人物描写、作品全体が醸し出す雰囲気はとても気になる作家さんです。つまらないと一言で片づけてはいけない特殊な感じです。2016/11/03
はっせー
71
日常系の小説が好きな人や猫が好きな人におすすめしたい本になっている!この本を一言でまとめると猫小説だとおもう。話としては恋人とわかれてしまった私が広いアパートに住むことになり知り合いが出たり入ったりする話になっている。だが日常の話より猫の話題の方がおおい!あと競馬の話も。いやー猫好きなら読みたくなるだろうなって思うほど著者の猫への愛が溢れている。続編もあると書いてあったのでぜひ続きも読みたいと思っている!2023/10/18
ナマアタタカイカタタタキキ
68
非常に質の高いグダグダ。しかしこれは!とても良き!“何を”描くかよりも、“どのように”描くかという方が純文学において重要であることの証明にもなる作品ではないだろうか。猫との戯れと競馬、そして海。ドラマチックなことは何もなくてもこんなに楽しめる。解像度は高いけれど不用意に意味を持たない文章の流れがとても心地好く、作中でゴンタが書けないと宣った“ただ時間が経っていく”ことを、帯にあるような“独自の文体”でもって緻密に描いている。けど、この帯と裏表紙の解説を見て“わあ、面白そう!”と思って手に取る人って、一体…2020/07/27
アマニョッキ
59
2LDKの部屋と競馬と猫と若者たちのお話。誰もが書きたくなるような劇的なことはなにひとつおこらないけれど、あの日暑かった部屋や、木があることで感じた風や、肌にまとわりつく砂や、閉まっていた遊園地や、書かなくてもいいけれどそこに確かにあった日常をふわりと見せてくれる。ああ、この感じとても好き。ずっと読んでいられるやつだ。人と繋がる温度と湿度がわたしには心地よくて、ぬくぬくでうたた寝しているときのような幸福感をもらえる。「世界は猫のお礼でできている」なんてばかげた名言!だけどすごく好き。2017/11/26
眠る山猫屋
50
なんだかフワフワする。フワフワした生き方をしている主人公の部屋に転がり込む同居人たち。彼女まで連れ込む甘ったれなアキラや、ワイシャツのまま寝ちゃう島田にイライラさせられっぱなし。主人公も中途半端に寛容だし。それが最後にみんなで鎌倉の海に行くあたりで昇華されて…。野良猫探しのエピソードや競馬への推察、アキラの彼女よう子のキャラクターなど、作者の私生活っぽいけど技量も感じる一冊でした。こんな日々が送れたなら素晴らしい、だろうね。2020/07/14