内容説明
『日本を決定した百年』は、簡にして要を得た記述にて明治建国から戦後復興までの日本の近代化を跡づけた異色の歴史書である。すぐれた歴史感覚をもち勤勉に働く国民を描きながら、吉田は「日本人は甘やかされてはならない」と述べることを忘れていない。吉田の肉声が聞こえる「思出す侭」を付す。
目次
第1章 明治の創業―冒険と成功
第2章 近代化のジレンマ
第3章 戦後の二、三年―困難と努力
第4章 奇跡の経済発展―勤勉と幸運
第5章 奇跡のあとで
日本を決定した百年 付録―外国人がみた近代日本
思出す侭
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
25
○吉田茂首相がされたことは是と思える部分ばかりではありませんが、戦略性と信念という点においては国を託すに足る政治家であると感じました。また外国人が見た日本は意外な意見もあり面白かったです。2025/01/08
Miyoshi Hirotaka
23
巨人の肩に乗ると遠くまで見える。吉田茂から見た開国から戦後の百年の通史。明治の創業、近代化のジレンマ、戦後の混乱、経済発展が描かれる。イデオロギーは歴史を汚染する。終戦で近代史を前編と後編に分ける歴史観は陳腐化。また、多様性や共生といった言葉が独り歩きし、国の形についての議論が外部からの影響に脆弱になり、必要以上に複雑になっている。歴史は多層から成る。各層は違った周期で繰り返すので、全体としては韻を踏むような現象が生じる。名宰相の達観は今起きていることや次に起きることへの確からしい選択肢を示してくれる。2025/07/05
Willie the Wildcat
16
著者の歴史観、人間観、国家観を垣間見ることができる貴重な資料。印象深いのは『負けっぷり』。敗けの美学と解釈。もう1点は『政治の運用は人』。西園寺公、山本伯の言動も引用し、「常に”国家”に主眼をおき、一身を投じる言動」が政治家には求められる点を改めて主張。”軸”がぶれず読んでいて気持ちがいい。さて、振り返って現代の政治家はいかに・・・。2011/09/18
z1000r
12
一般的には馬鹿野郎解散の人。自分としては戦前、戦中も親英米の人というイメージ、主に戦後に活躍するが、見識があり冷静な人だと思った。当人観の近代史は非常に参考になった。2020/08/05
ムカルナス
10
明治以降の百年を俯瞰する書。印象に残ったのは、戦後にGHQにより行われた農地改革は以前から改革の必要が認識されていたからこそ多くの人々が受け入れ成功したということ、そして農地改革により生産性が向上し豊かになった小作農が日本の消費社会を牽引し復興を助けたということ。すると戦前に農地改革が出来ていれば2.26事件も起こらず、大陸の権益死守に拘らなくて済んだ可能性があるのでは?明治の元老制度もそうだが日本は時代に合わせて自ら改革することが出来ないことが躓きの原因となっている気がする。現代も然り。2016/07/29