内容説明
霧に閉ざされた雨山峠を越えて少年達は谷川岳をめざす―。戦後の荒廃の中で、戦時の傷痕を背負い満たされぬ思いを抱いていた彼らは、ここで一瞬の光芒を放ち、魔の岩壁を走り抜けた。登山界の伝統に風穴をあけた第二次RCCに加わるクライマー達の「不器用で一途で戦闘的な青春」を縦横に描いた力作。
目次
1 穂高滝谷・松濤岩
西丹沢・雨山峠
登攀者・日本山嶺倶楽部
反逆・バリエーションルート
我が山・チマエテルナ
北岳バットレス中央稜
コップ状岩壁・埋め込みボルト
一ノ倉沢・残照
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
3
1982年頃、旧版山渓ノンフィクションシリーズを購入し、読了。戦後の登攀界をリードした第2次RCCは、精鋭ぞろいのクライマー集団。彼らが開拓し初登攀した岩壁は今も難易度が高いバリエーションルートである。奥山章に続いた吉尾弘、芳野満彦、松本龍雄等の活躍は今もって不動のままでである。本書はそんな若者たちの青春群像を描いている。また、第2次RCCによって国内の岩登りのグレード体系が定義、整備されたことも大きな功績となっている。
たなかはん
2
子供の頃、よく山で遭難したり、近所の岩の滑落事故のニュースをよく聞いたけれど、最近そんなニュースをそれほど聞かなくなったのは、人口が減ったのか、冒険する人が減ったのか、ニュースにならなくなったのか。戦時中から戦後にかけて山に青春をかけた男たちの物語。YouTubeでエベレスト登山を配信する人まで出てきた昨今、隔世の感を感じながら読んだ。2021/07/31
Shungo Shimazu
2
岩を攀じることに人生の全てを賭けた男達の青春群像。みな一銭にもならぬ岩登りに命を賭けた。世間から外れ、多くは山で命を落としている。どこまでも熱く、崇高さすら感じる男達の生き様は何度読んでも飽きることが無い。2015/06/10
Yoshihiko Nakade
2
同じ著者が描いた3人のクライマーの前の世代の、前衛的なクライマーたちが生まれ、もがき、第二次RCCという前衛的な集団へと至るとともに、その終焉を迎えるまでを描いた一冊・・・熱くて、どうしようもなく切ない若者たちの姿がそこにあった。 集団の歴史を描いていながら、著者らしく登場人物それぞれの内面までが深く切り込んでおり、とても読み応えがあった。先日読んだ「ああ南壁」とは順序が逆になるのだが、それで良かったのだと思う。やっぱり山はいいなぁ。 2013/07/07
Mirunovic
1
再読。戦中の反動か、山へ没頭する姿や、生き残り歳を重ねて行く姿が、見事に描写されていると思います。いまの時代、若者は何に情熱を抱いているのか…なぜか考えにふけってしまいました。2018/02/12