内容説明
ポツダム宣言受諾から始まる日本国憲法誕生史において、昭和21年3月4日からGHQで行われた逐条審議の異常な場面は忘れることができない。日本側は法制局部長の佐藤達夫ただ一人。多数の民政局員に囲まれ30時間の孤軍奮闘、一国の基本法をめぐりわたりあった。本書は、憲法誕生の全過程に深く関わった著者が、この夜のエピソードを始め自ら体験した貴重なことがらを明かす現代史の必読書である。
目次
憲法改正の発端
松本案の起草
マッカーサー草案の交付
司令部の徹夜会議
口語体の新草案
枢密院の関門
憲法議会ひらく
草案貴族院へ
憲法誕生
憲法の英訳文
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
12
「日本国憲法成立に最初から深く関わった著者による、著者にしか体験できなかった貴重な記録。しかも、自らの役割を誇張する事なく、淡々と平易な文体で書かれている」(解説より)。3月4日、松本大臣と共に改正案を総司令部へ持参。大臣の敵前逃亡の為、ただ一人で民政局との徹夜の確定案作業に臨む。解放されたのは5日午後4時。報酬はおやつに出されたジェリービーンズ数個だけ。それをポケットに入れて持って帰る。子供達はお菓子だと分からず口にしなかった…。逃げた大臣への恨み節もなく、子供想いの一面といい人柄が行間から滲んでいる。2025/06/05
くまさん
2
1946年3月4日から夜を徹して行われた、日本国憲法条文のGHQとの最終的な調整取りまとめに立ち会った、内務省法務局部長の体験記である。 “赤い条文の始末”の項では、財産の国有化などの“赤い条文”をマッカーサー草案から修正・削除できたことや、復活させられた項目については記述されているが、March 4と表紙にメモ書きがある憲法草案の佐藤達夫文書40(国立国会図書館)の中の手書きの追加条文、「国民ハ外国ニ移住シ又ハ国籍ヲ離脱スルノ自由ヲ侵サルルコトナシ。」にはまったく言及していない。これはマッカーサー草案2012/11/24
熱東風(あちこち)
1
中路啓太氏『ゴーホームクイックリー』のベースとなった本。/読んでハッと察せられたのは、181頁。新憲法を作成しても、それに付属する法令の制定や改廃といった作業が必要であるということ。それもかなり膨大な量だ。憲法という根本的な法律がガラッと変わったのだからよく考えれば当然のことなのだが、ともすれば「新憲法成立、やれやれ一件落着」で話が終わってしまうと思いがちだが、実はそうはならない。憲法を改正するというのは国家の根幹から変えてしまう出来事なのだ、と今更の如く認識させられる。2020/12/31