内容説明
明帝国の初期、自ら兵を率いてのモンゴリア遠征、南海への鄭和派遣、日本との勘合貿易など対外関係を中心に華々しい功績を残した成祖永楽帝。中国史上屈指の“英雄豪傑”皇帝の生涯を、明朝創始者・朱元璋の四男としての生い立ちに始まり、靖難の変による帝位簒奪、遠征中の死に至るまで、丹念に辿った傑作評伝。
目次
1 明帝国の成立
2 燕王朱棣の登場
3 建文帝と燕王
4 靖難の変
5 燕王から永楽帝へ
6 永楽帝、沙漠をわたる
7 西蔵と安南とシベリア―対外積極政策のゆくえ
8 草原の英傑チムール
9 チムールの征明計画
10 日本国王源道義
11 鄭和の南海遠征
12 永楽帝の時代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鮭
3
中華史上最も有名な皇帝の一人だが、意外と一般向け著作は少なく、新鮮に楽しめた。成祖の国際感覚を反映してか、国籍・宗教を問わない人材の使い方が印象深い。またあの派手な対外展開に関わらず、経済破綻をみなかったことは著者同様非常に疑問が残った。民族的エネルギーもあるだろうが、臣下に敏腕な民政政治家でもいたのかもしれない。2009/09/22
BIN
2
戦争に外交といった対外的な面で中国歴代の皇帝で一番激しく活動した皇帝だろう。初代皇帝とかでは自ら武器をもって先頭に立って闘うのも結構いると思いますが、2代目以降でそんなことをやる皇帝もいないのではないだろうか。個人的には永楽帝よりチムールに惹かれたが、よく勉強になった。永楽帝主人公の小説を誰か書いてもらいたい2011/02/05
ジュンジュン
1
人物往来社刊「中国人物叢書」シリーズからの文庫化。本書でも充分永楽帝の生涯を概観できるが、最新研究成果を踏まえた檀上寛氏の著書のほうがおすすめ。
MIRACLE
1
人物往来社の中国人物叢書『永楽帝』の文庫版。明の第三代・永楽帝の足跡を描いた本。なんと、筆者は「人物」叢書にもかかわず、本書の半ば(161頁)で永楽帝の死について述べている。また、チムールは永楽帝と対決に至ったわけでないので、本書でとりあげるのは不適当だ(遠征途中で病死)。文庫化にあたり、第五次親征の個所だけでも、末尾に移動していれば、なんとか形になったのだが。なんとも、中途半端な作品である。宮崎市定『隋の煬帝』の足元にも及ばない。また、本書は背やけしやすいのも難。2015/07/18
でこれ
1
永楽帝その人に焦点をあてたというよりは、朱元璋からの流れや、ティムールや足利義満の動向などを踏まえて総合的に見ていった本。初の永楽帝の伝記が外国人である日本人によってなされたというのはおもしろい。中国では人気がないのかしら。2014/06/22