内容説明
憧憬の西域、天山山麓の大草原に立って、宿年の関心であった中国周縁にひろがる地と人々の歴史と風貌、遊牧と農耕の暮らし方を語る「イリ十日記」や「古朝鮮の成立」「倭の印象」など、中国・朝鮮・日本を連関して観ることから普遍文明について地球規模で考察する雄大なエッセイ集。
目次
天山の麓の緑のなかで
イリ十日記―天山北路の諸民族たち
文明論への重要な資料
鮮やかな光度をもつ北方文化
沸騰する社会と諸思想
複合された古代世界の舞台
漢字と孔子
『叛旗』と李自成のこと
古朝鮮の成立
アラブと錠前
友人の旅の話
倭寇と老熟
倭の印象
高野山管見
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
54
前回読んだ司馬氏のエッセイにモンゴルや中国の事が書かれていたので「確かこちらの本にもそのような事が描かれていたのでは?」と、不確かな私の記憶を辿りながら本棚から引っ張り出して読む事に!このエッセイの共通のお題は「遊牧」で、遊牧をタイトルにその定義と地理的条件や歴史、文明等を描いている。前半は著者のモンゴル、イリ版『街道をゆく』といった感じで進む。十数年前、私に「遊牧とは何か」を考えるきっかけをくれた本で、今回久しぶりの再読。2018/07/25
たつや
47
遊牧民の歴史から中国史、古代史などを網羅したエッセイ集というか教科書の様なレベルの本でした。「漢字と孔子」が面白かったです。2016/11/23
優希
44
歴史はその風土で感じるものなのですね。司馬さんの原点は普遍的な文明であることが分かります。2022/05/03
時代
15
大陸の事、宗教教義の事、などなど。流石にこれだけ司馬さんの随筆を読んでいるとすんなりと論旨が沁みてくる様になった。うんうん△2016/12/26
aponchan
8
司馬遼太郎氏の深い歴史への造詣に敬服するばかり。自分が不勉強による不知領域が広いからであるが、遊牧生活様式が定住型農耕生活様式よりも後発であることやその秀でていること等を知り、驚いた。中国が人口の少ない北方民族に制されることの多きを騎馬による軍事力のみのような印象を持っていたことの誤りに気付かされる。また、日本が文明なき地であるという視点も持っていなかったので、いろいろな意味で勉強になった。2019/07/09